日本の春を彩る伝統行事、桃の節句。
ひな祭りが近づくと、街中で可愛らしい雛飾りを見かけるようになり、心が華やぎますよね。
最近では、伝統的な「雛人形」だけでなく、天井やスタンドから吊るして飾る「つるし雛」も一緒に飾りたいと考える方がとても増えています。
SNSなどでも、親王飾りの横に色とりどりのつるし雛を並べた、とても豪華でフォトジェニックな写真を見かけることが多くなりました。
つるし雛と雛人形の両方を飾ることは、単に見た目が華やかになるだけでなく、実は子供の成長を願う意味合いをより深く、力強いものにすることにもつながるんです。
一方で、いざ両方飾ろうと思うと、様々な疑問や不安が浮かんでくる方も多いのではないでしょうか。
「両方飾ると、部屋がごちゃごちゃして見えないかな?」
「配置のバランスや、守るべきマナーはあるの?」
「そもそも、雛人形があるのにつるし雛まで飾る必要はある?」
特に、二人目の女の子が生まれたご家庭では、スペースの問題や予算、そして姉妹間のバランス(お姉ちゃんとの差)について、頭を悩ませることも少なくありません。
この記事では、そんな悩めるママ・パパのために、雛人形とつるし雛を組み合わせて飾る際のポイントや、それぞれの飾りに込められた深い願いについて、私自身の経験やリサーチも含めて詳しく解説していきます。
伝統を大切にしつつ、現代のライフスタイルに合わせた賢い選び方や飾り方を知れば、今年の桃の節句がもっと特別で、心温まるイベントになるはずです。
ぜひ最後までお読みいただき、素敵なひな祭りの準備にお役立てくださいね。
- つるし雛と雛人形の両方を飾ることで生まれる相乗効果と深い意味
- 二人目の娘のお祝いとしてつるし雛を選ぶメリットと選び方
- 限られたスペースでも美しく見せるための具体的な配置テクニック
- 飾る時期や片付けるタイミングに関する暦と天気の重要性
本記事の内容
つるし雛と雛人形の両方を飾る意味と次女への配慮
「雛人形があるのに、つるし雛まで飾るのは贅沢すぎるかな?」「飾りすぎじゃないかな?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
でも、安心してください。雛人形とつるし雛を同時に飾ることは、決して過剰な装飾ではありません。
むしろ、それぞれが持つ本来の役割や意味を理解すると、両方を組み合わせることで、お子様への「願い」がより立体的で強固なものになることがわかります。
ここでは、両方を飾ることの文化的な意義や、特に次女のお祝いとして選ばれる理由、そしてそこに込められた親心について、深く掘り下げて見ていきましょう。

つるし雛の由来と込められた願いの意味
まずは、「つるし雛」がどのような背景で生まれたのか、そのルーツを知ることから始めましょう。
つるし雛は、江戸時代後期に静岡県の伊豆稲取地方などで始まったとされる、庶民の切実な願いから生まれた風習です。
当時、煌びやかで高価な雛人形を購入できるのは、一部の裕福な家庭に限られていました。
しかし、「自分の子供の幸せを願う気持ち」に、貧富の差はありませんよね。
雛人形を買う余裕のなかった庶民のお母さんやおばあちゃんたちは、諦めることなく、自分たちにできる精一杯の方法でお祝いをしようと考えました。
そこで、近所の人たちや親戚から着物の端切れ(はぎれ)を少しずつ譲り受け、それを持ち寄って小さな人形を一針一針手作りし、紐で吊るして飾ったのが始まりと言われています。
この「布を譲り受ける」という行為には、単なる材料調達以上の意味があったそうです。
多くの人から布をもらうことで、その布に宿る多くの人々の「福」や「生命力」を分けてもらい、子供を守ってもらおうという願いが込められていたんですね。
一つひとつの細工物は、決して単なる飾りではありません。
例えば、「食べ物に困らないように」という願いを込めた野菜や果物、「病気をしないように」という願いを込めた動物、「良縁に恵まれるように」という願いを込めた花など、すべてに具体的な祈りが込められています。
つるし雛は、親から子へ、そして地域の人々から子供へと受け継がれてきた、温かくも切実な「無償の愛」の結晶なのです。

現在では、日本三大つるし飾りとして知られる地域ごとに、少しずつ特徴が異なります。
それぞれの違いを知ると、選ぶ際の楽しみも増えるかもしれません。
| 名称 | 地域 | 特徴・由来 |
|---|---|---|
| 稲取つるし飾り (雛のつるし飾り) | 静岡県 東伊豆町稲取 | 発祥の地とされる。桃の節句に雛段の両脇に飾る。 一つひとつの細工物が大きく、 鮮やかな赤色が特徴的。 1本の紐に奇数個の人形を吊るすのが基本。 |
| さげもん | 福岡県 柳川市 | 紅白の布を巻いた竹の輪に、 7個×7列の49個の細工物と、 中央に柳川まりを2個吊るし、 人生50年よりも長生きするようにと 計51個にする伝統がある。 |
| 傘福 (かさふく) | 山形県 酒田市 | 傘の幕に細工物を吊るす独特の形状。 元々は酒田の豪商が神社仏閣に 奉納するためのものだったと言われ、 信仰心が強く反映されている。 |
このように、地域によって形式は異なりますが、根底にある「子供の健やかな成長と幸福を願う心」は共通しています。
現代の私たちが市販のつるし雛を選ぶ際も、こうした歴史的背景に思いを馳せてみると、ただのインテリア雑貨とは違った、重みのある伝統文化として感じられるのではないでしょうか。
手作りのキットなども販売されているので、江戸時代のお母さんたちのように、お子様のために一つ作ってみるのも素敵な思い出になるかもしれませんね。
雛人形とセットで飾る守護と招福の効果
では、なぜ伝統的な「雛人形」と「つるし雛」を両方飾ることが良いとされるのでしょうか。
それは、この二つがそれぞれ全く異なる「役割」を持っているからなんです。
まず、雛人形(お雛様やお内裏様)の本来の役割をご存知でしょうか?
雛人形は、生まれたばかりの子供に降りかかるかもしれない災厄(病気や怪我、悪い運気など)を、子供の代わりに引き受けてくれる「身代わり(形代・かたしろ)」の役割を持っています。
平安時代の「流し雛」にルーツを持つこの考え方は、いわば子供を守るための「盾」のような存在であり、静かに座って見守る「座(静)」の祈りを表しています。
そのため、雛人形は「一人一飾り」が基本とされ、共有するものではないと言われるのも、この「身代わり」という性質によるものです。
一方で、つるし雛はどうでしょうか。
つるし雛に吊るされるたくさんのモチーフ(細工物)は、衣食住の豊かさや良縁、健康など、具体的な幸福を「願い」、それを呼び寄せるためのものです。
たくさんの縁起物を吊るすことで、福をかき集め、招き入れるという意味合いが強く、こちらは動的な「吊(動)」の祈りを象徴していると言えます。
つまり、役割を整理すると以下のようになります。
● 雛人形:マイナス(災厄)を防ぐ「守り」の役割
● つるし雛:プラス(幸福)を招く「攻め」の役割
この二つを組み合わせることで、「災厄を鉄壁の守りで防ぎつつ、幸福を積極的に招き入れる」という、最強の布陣でお子様の成長を応援することができるのです。
これが、両方を飾ることで儀式としての完全性が高まると言われる理由です。
実際に両方飾ってみると、雛人形だけの時の厳かで静謐な雰囲気から一変し、つるし雛が加わることで部屋全体がパッと明るく、賑やかで祝祭感あふれる空間になります。
子供にとっても、少し怖いと感じることもある日本人形(雛人形)の横に、可愛らしい動物や果物のつるし雛があることで、親しみを持ちやすくなるというメリットもあります。
「お雛様が◯◯ちゃんを悪いことから守ってくれて、つるし雛が幸せを運んでくれるんだよ」と、お子様に優しく教えてあげることで、節句の意味をより深く伝えることができるでしょう。

二人目の娘につるし雛を選ぶメリット
次女、三女と女の子が続けて生まれたご家庭で、必ず直面するのが「二人目の雛人形どうする問題」です。
「長女には立派な七段飾りや親王飾りを買ったけれど、次女にも同じものを買うスペースも予算もない…」
「でも、人形を兼用にするのは『身代わり』の意味からすると良くないらしいし…」
「かといって次女に何も買わないのは、将来『どうして私のはないの?』と言われそうで可哀想…」
そんな切実な悩みを解決する最適解として、近年圧倒的に支持されているのが「つるし雛」なんです。
つるし雛を次女のお祝いとして選ぶメリットは、大きく分けて3つあります。
- 省スペースで飾れる(空間効率の良さ)
これが最大のメリットと言えるでしょう。
つるし雛は「吊るす」飾りなので、横幅や奥行き(床面積)をあまり必要としません。
縦の空間(高さ)を有効活用するため、長女の雛人形の脇や、ちょっとした隙間に設置することが可能です。
これなら、マンションやアパートなど限られた住環境でも、無理なく二人分のお祝いを飾ることができます。 - 「自分のお祝い」という所有感を与えられる
お下がりや共有ではなく、「これは〇〇ちゃんのために用意した、〇〇ちゃんだけの飾りだよ」と言って用意してあげることで、次女にも自分専用のものがあるという喜びと安心感を与えることができます。
特に、つるし雛の台座に名前や生年月日を入れた「木札」や「名前旗」を添えてあげると、その特別感は格段にアップします。
「お姉ちゃんはお雛様、私はつるし雛」という役割分担ができるので、比較して劣等感を持つことも少なくなります。 - 姉妹で一緒に祝う華やかな空間作り
長女の雛人形の横に次女のつるし雛を飾ると、全体としてボリュームが出て、とても豪華な雛飾りになります。
別々の場所に飾るのではなく、一つの場所にまとめて飾ることで、「姉妹仲良く育ってほしい」という願いを表現することもできます。
将来、長女が雛人形を卒業したり、嫁いだりした後も、つるし雛ならインテリアとして次女の部屋に飾り続けやすいという利点もあります。
このように、つるし雛は現代の家族構成や住宅事情にマッチした、非常に賢い選択肢なのです。
決して「雛人形の代用品」や「妥協」ではなく、次女のための「特別な贈り物」として、自信を持って選んであげてくださいね。

飾る前に知りたい動物や植物のモチーフ
つるし雛の最大の魅力は、なんといってもその可愛らしい細工物(モチーフ)の数々です。
「どれも可愛くて迷っちゃう!」という方も多いと思いますが、実はその一つひとつに深い意味や語呂合わせによる願いが込められていることをご存知でしょうか。
モチーフの意味を知って選ぶと、飾り付けがより楽しくなりますし、お子様と一緒に「これはね…」とお話しする時のネタにもなりますよ。
ここでは、代表的なモチーフとその意味をジャンル別にご紹介します。
【動物のモチーフ】
- 猿(さる)
「病が去る」「災いが去る」にかけて、厄除けの象徴です。猿は子供への愛情が深いことでも知られ、母性愛や安産の意味もあります。赤い顔とお尻が特徴的です。 - うさぎ
赤い目は魔除けの力があるとされ、ピョンピョン跳ねる姿から「飛躍」を意味します。また、多産であることから子孫繁栄の象徴でもあります。現代のつるし雛では一番人気のアイドル的存在です。 - 犬(いぬ)
安産のお守り(戌の日)でも有名ですが、犬は安産で子供も丈夫に育つことから、健康祈願の象徴です。 - 亀(かめ)
「鶴は千年、亀は万年」の通り、長寿の象徴です。一歩一歩着実に歩む姿から、粘り強さの意味も。 - 金魚(きんぎょ)
優雅に泳ぐ姿から「人生をスイスイ渡れるように」。また、赤い色は魔除け、金魚=金余(お金が余る)に通じて金運アップの意味も。
【植物・食べ物のモチーフ】
- 桃(もも)
節句の名前にもなっている桃は、古来より邪気を払う霊木とされています。実が瑞々しいことから、延命長寿や若々しさの象徴でもあります。 - 唐辛子(とうがらし)
虫がつかないことから、悪い虫(悪い男や災い)がつかないようにという、娘を持つ親ならではのユニークな願いが込められています。 - 大根・人参
大地に深く根を張る根菜類は、生活の安定や健康の象徴。「食いっぱぐれがないように」という願いも。 - 花(桜・梅・椿など)
花のように可愛らしく育ちますように。それぞれの花言葉にちなんだ願いも込められます。
【道具・その他のモチーフ】
- 這い子人形(はいこにんぎょう)
ハイハイをする赤ちゃんの姿。「這えば立て、立てば歩めの親心」の通り、健やかな成長を願う基本のモチーフです。 - 巾着(きんちゃく)
お金が貯まりますように。また、口が紐でしっかり締まることから、無駄遣いをしないように、家庭の財布の紐をしっかり締められるように、という意味も。 - 枕(まくら)
「寝る子は育つ」。ぐっすり眠って、健やかに育ちますように。 - 三角(さんかく)
香袋(薬袋)を表しており、病気に無縁でありますようにという健康祈願。また、とがった形は魔除けにもなります。
いかがでしたか?
最近では、伝統的なモチーフだけでなく、いちごやケーキといった現代的なモチーフを取り入れたユニークなつるし雛も登場しています。
基本の意味を押さえつつ、お子様の雰囲気やママの好みに合わせて、自由に選んでみるのも現代ならではの楽しみ方ですね。
もし手作りキットなどで自作する場合は、「この子は食いしん坊だから食べ物を多くしようかな」なんてアレンジするのも素敵です。

現代の住宅事情に合うコンパクトな飾り
「つるし雛」と聞くと、天井から大きな輪っかを吊るす本格的なものをイメージされる方もいるかもしれません。
もちろん、和室の床の間に飾るような大きなつるし飾りは圧巻の迫力ですが、現代のマンションや洋風のリビングには少し大きすぎる場合もあります。
そこで最近主流になっているのが、場所を選ばずに飾れる「コンパクトタイプ」や「スタンド付きタイプ」です。
現代の住宅事情にフィットする、賢い選び方のポイントをご紹介します。
● スタンド付き卓上タイプ
高さ40cm〜70cm程度の、自立するスタンドがセットになったタイプです。
これなら、天井にフックを取り付ける工事や穴あけが不要で、賃貸住宅でも安心して飾れます。
雛人形(親王飾りや収納飾り)のすぐ横や、玄関のシューズボックスの上、テレビボードの脇など、ちょっとしたスペースがあればどこでも設置可能。
収納時も箱が小さく済むので、クローゼットの場所を取りません。
● 壁掛け・タペストリータイプ
さらに省スペースを目指すなら、壁面を活用するタイプがおすすめ。
半円形のつるし飾りを壁に沿わせて飾ったり、ちりめん細工をあしらったタペストリーを掛けたりすれば、床面積(設置スペース)は実質ゼロです。
小さなお子様やペットがいて、スタンドを倒してしまう心配があるご家庭にも、手の届かない高さに飾れる壁掛けタイプは安全でおすすめです。
● インテリアに馴染む「ニュートラディショナル」デザイン
最近は、伝統的な「赤」や「金」を基調としたものだけでなく、現代のインテリアに調和するカラーリングの商品が増えています。
例えば、白やベージュ、淡いピンクを基調とした「パステルカラー」のつるし雛や、無垢材のスタンドを使用した「ナチュラルテイスト」のものなど。
これなら、北欧風のリビングやモダンな洋室に置いても違和感がなく、むしろおしゃれなインテリアの一部として機能します。
「伝統行事だから和室に合わせなきゃ」と無理をする必要はありません。
普段の生活空間に自然に溶け込むデザインを選ぶことで、ひな祭りの期間中、ずっと心地よく眺めることができます。
お部屋の雰囲気や、すでにお持ちの雛人形のテイストに合わせて、ベストな一つを見つけてくださいね。

つるし雛と雛人形の両方を美しく見せる配置と時期
「お気に入りのつるし雛は見つかったけど、実際にどう並べればいいの?」
せっかく素敵な雛人形とつるし雛を揃えたのですから、配置にもこだわって、最高に美しい空間を演出したいですよね。
適当に置いてしまうと、どうしても「取って付けた感」や「ごちゃごちゃ感」が出てしまいがちです。
ここでは、プロのコーディネーターも意識している配置のバランスやテクニック、そして意外と知らない「飾る時期・片付ける時期」のマナーについて、実践的なノウハウを伝授します。

雛飾りの横に並べるバランスと配置のコツ
雛人形とつるし雛を並べて飾る際、最も重要なのが「高さ」のバランス(高低差)です。
ここを意識するだけで、全体のまとまりが劇的に良くなります。
基本のルールとして覚えておきたいのが、「つるし雛の高さは、雛人形(屏風を含む全高)と同じくらいか、少し高い程度が美しい」ということです。
- シンメトリー(左右対称)配置【格式のスタイル】
これは、雛人形(親王飾りや段飾り)を中央に置き、その左右に対(2つ)のつるし雛を配置するスタイルです。
神社やお寺の狛犬のように、主役を守る形で配置するため、非常に格式高く、安定感のある構図になります。
この時、中央の雛人形よりも両脇のつるし雛が少し高い位置に来るようにすると、「V字ライン効果」が生まれ、視線が自然と中央のお雛様に集まりやすくなります。
まるで額縁(フレーム)のように主役を引き立ててくれるわけです。 - アシンメトリー(左右非対称)配置【モダンのスタイル】
スペースの都合でつるし雛を1つだけ飾る場合は、雛人形の左右どちらかに配置します。
この場合、高さに変化をつけることでリズム感が生まれ、モダンでおしゃれな印象になります。

📝【高さの黄金比率】
一般的に、雛人形の高さの1.1倍〜1.2倍程度の高さのつるし雛を選ぶと、全体のバランスが最も美しく見えると言われています。
例えば、雛人形(屏風の上端まで)の高さが40cmなら、つるし雛は45cm〜50cm程度のものがベストバランスです。
つるし雛が小さすぎると(0.7倍以下)貧弱に見えてしまい、逆に大きすぎると(1.5倍以上)圧迫感が出て主役の雛人形を食ってしまうので注意が必要です。
また、照明(ライトアップ)を工夫するのも一つの手です。
ぼんぼりの灯りだけでなく、つるし雛の影が壁に落ちるように間接照明を当てると、夜のリビングで幻想的な雰囲気を楽しむことができますよ。
📝配置の裏技:視線の向き
雛人形(男雛・女雛)の視線が向いている方向の空間を少し空けて、その奥や脇につるし雛を置くと、空間に奥行きが生まれます。
お雛様が見ている先に「願いの飾り」があるようなストーリー性を感じさせる配置です。
マンションでも可能な空間演出のアイデア
「うちはマンションだから、床の間なんてないし、横幅もギリギリ…」
そんなご家庭でも、工夫次第で広く、美しく見せることは十分可能です。
限られたスペースを有効活用する「空間演出」のアイデアをいくつかご紹介します。
● 奥行き(レイヤー)を使う
横に並べるスペースがない場合は、前後の配置(レイヤー)を意識しましょう。
例えば、リビングのチェストやサイドボードの上に飾る際、雛人形を少し奥に配置し、つるし雛(卓上ミニタイプ)をその手前の端に置きます。
こうすることで、平面的な飾りではなく立体感が生まれ、狭さを感じさせない奥行きのある展示になります。
● 背景を整える
マンションのリビングに飾る場合、背景にテレビやコンセント、生活用品が映り込むと、どうしても生活感が出てしまいます。
そこで、雛飾りの背面に「屏風」だけでなく、季節感のある「手ぬぐい」や「風呂敷」、「和紙」などをタペストリーとして壁に貼るのがおすすめです。
背景を一枚の絵のように整えることで、そこだけ別世界のような「聖域」を作り出すことができます。
つるし雛の色味と合わせた背景色にすると、統一感が出てプロっぽい仕上がりになりますよ。
● 吊るす場所をDIYで作る
スタンドを置く場所すらない!という場合は、空中を活用しましょう。
カーテンレールや、壁に傷をつけにくいフック(ピクチャーレール用や石膏ボード用ピンなど)を利用して、上からつるし雛を吊るします。
これなら設置面積(フットプリント)はゼロ。
風が通るとゆらゆらと揺れるつるし雛本来の美しさも楽しめます。
ただし、落下には十分注意し、しっかり固定できる場所を選んでくださいね。

失敗しないサイズ選びとデザインの基準
つるし雛を購入する際、最も多い失敗が「サイズ選び」です。
「ネットで見て可愛かったから買ったけど、届いてみたら意外と大きくて雛人形とバランスが悪かった…」
「台座が大きすぎて棚に乗らなかった…」
こんな悲しい事態を避けるために、購入前のチェックリストを確認しましょう。
【購入前の3大チェックポイント】
- 設置スペースの「実寸」を測る
目分量は絶対NGです。メジャーを使って、雛人形を置いた状態で、その横にどれくらいのスペース(幅・奥行き)が残っているかをミリ単位で測りましょう。
特につるし雛のスタンドの「台座の直径」は見落としがちです。棚からはみ出さないか要確認です。 - 高さをシミュレーションする
先ほど解説した通り、雛人形との高さのバランスが重要です。
ペットボトルや箱などを積み上げて、「このくらいの高さ」というのを実際に置いてイメージしてみると失敗がありません。 - デザインの「調和」を考える
既存の雛人形との相性を考えます。
- 伝統的な雛人形(赤毛氈、金屏風)の場合:
つるし雛も、正絹や古布を使った伝統的なデザインや、赤・朱色を基調としたものが合います。重厚感を合わせるのがコツです。 - モダンな雛人形(ケース入り、木目込み、平飾り)の場合:
ちりめん素材のパステルカラーや、白木台のシンプルなデザインがマッチします。あえて色数を抑えた「単色(ワントーン)」のつるし雛もおしゃれです。
これから両方買う(第一子など)場合は、最初からコーディネートされたセット商品を買うのが一番リスクが低く、統一感が出ます。
買い足しの場合は、スマホで雛人形の写真を撮って、お店の人に見せながら相談したり、画面上で見比べたりするとイメージのズレを防げます。
- 伝統的な雛人形(赤毛氈、金屏風)の場合:

飾り始める時期は立春や雨水の日が最適
雛飾りはいつから飾るのが正解なのでしょうか?
基本的には、立春(2月4日頃)から2月中旬にかけて飾り始めるのが一般的です。
節分(2月3日)で豆まきをして家の中の邪気を払った後、清浄になった空間に春を招く意味で飾るのが理想的な流れとされています。
また、特におすすめしたいのが、二十四節気の一つである「雨水(うすい)」の日に飾ることです。
雨水(毎年2月19日頃)は、雪が雨に変わり、氷が解けて水になり、農耕の準備を始める時期。
この日に雛人形を飾ると、「良縁に恵まれる」という素敵な言い伝えがあるのをご存知でしたか?
水は生命の源であり、流れを作るもの。
(出典:国立天文台 暦計算室『二十四節気とは?』)
良縁が水のようにサラサラと流れ込んでくる、という意味が込められているのかもしれませんね。
もちろん、これらはあくまで目安です。
「大安」や「友引」などの六曜を気にして吉日を選ぶのも良いですし、何より「家族みんなで飾れる週末」を選ぶのが一番です。
せっかくの美しい飾りですから、早めに出して、なるべく長い期間楽しむのがおすすめですよ。

片付ける時期とカビを防ぐ保管の注意点
「雛人形を片付けるのが遅れると、お嫁に行き遅れる」
一度は聞いたことがあるこの迷信、実はちゃんとした理由があるのをご存知でしょうか。
一つは、「片付けのできる行儀の良い娘に育つように」という躾(しつけ)の意味。
もう一つは、「厄を引き受けてくれた人形をいつまでも置いておくのは良くない」という穢れ(けがれ)を払う精神的な意味。
そしてもう一つ、意外と科学的な理由として、「梅雨や湿気の時期まで出しっぱなしにするとカビが生えるから早くしまえ」という教訓も含まれていると言われています。
では、いつ片付けるのが正解なのでしょうか。
基本は「3月3日が終わったら、なるべく早めに」ですが、ここで最も重要なのはカレンダーの日付ではありません。
最優先すべきは「お天気」です。
人形やちりめん素材のつるし雛にとって、湿気は大敵です。
雨の日や曇りの日など、湿度が高い日に片付けてしまうと、箱の中に湿気を閉じ込めることになり、翌年開けたらカビだらけ…や、シミができている…という悲劇を招きかねません。
必ず、「よく晴れて乾燥した日(啓蟄の頃など)」を選んで片付けてください。
たとえ3月3日を過ぎても、雨が続くなら無理に片付けず、晴天を待つのが正しい判断です。
遅くとも春分の日(3月20日頃)までを目安に、天気の良い週末を見つけて片付けましょう。

【保管の際の重要ポイント】
- ホコリをしっかり払う
収納する前に、羽根はたきや柔らかい筆を使って、つるし雛の細工物の隙間に入ったホコリを丁寧に払いましょう。ホコリは湿気を吸着し、カビや虫食いの原因になります。 - 防虫剤の併用はNG
「人形用」の防虫剤を使用します。この時、絶対に種類の違う防虫剤を混ぜて使わないでください(化学反応でシミができることがあります)。
また、衣類用(ナフタリンなど)は成分が強く、プラスチックや塗料を溶かす恐れがあるので避けた方が無難です。
防虫剤が直接人形や布に触れないよう、紙に包んで入れるのも鉄則です。 - 保管場所の選定
湿気が少なく、寒暖差の激しくない場所(押し入れの上段や、空調の効いた部屋のクローゼットなど)が適しています。
床下収納や屋根裏は、結露や高温のリスクが高いので避けましょう。
これらのケアをしっかり行うことで、つるし雛はいつまでも鮮やかな色を保ち、長くお子様の成長を見守ってくれるはずです。
📝旧暦で祝う地域も
地域によっては、月遅れの4月3日まで飾る風習(旧暦の雛祭り)もあります。
お住まいの地域の習慣に合わせて柔軟に対応して大丈夫です。
【まとめ】つるし雛と雛人形の両方で祝う桃の節句
つるし雛と雛人形を両方飾ることは、現代の家庭において、伝統を大切にしながらも家族の形に合わせてお祝いを楽しむ、とても素晴らしい方法です。
「守り」の雛人形と、「願い」のつるし雛。
この二つが揃うことで、お子様への愛情表現はより深く、より華やかなものになります。
特に次女のお祝いとしてつるし雛を迎えることは、姉妹平等の精神と、それぞれの個性を大切にする親心の表れでもあります。
豪華な飾り付けを前に、家族みんなで写真を撮ったり、ちらし寿司を食べたりして過ごす時間は、お子様にとっても一生の思い出になるはずです。
「こうでなければならない」という堅苦しいルールに縛られすぎず、ご自宅のスペースやインテリアに合わせて、自由な発想でコーディネートを楽しんでみてください。
ママやパパが笑顔で準備をしてくれることこそが、お子様にとって一番のお祝いですから。
今年の桃の節句が、皆様のご家庭にとって、たくさんの「福」を呼び込む素敵な一日となりますように。