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冬至には「ん」のつく食べ物を食べると良い、と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。特に、冬至にかぼちゃを食べる風習は有名ですが、なぜ「ん」がつく食べ物なのか、その理由や具体的なリストを詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。

お正月の「春の七草粥(ななくさがゆ)」は、その目的(疲れた胃を休める)と共に広く知られていますが、冬にも「七種(ななくさ)」があり、そしてそれが「ん」という文字と深く関わっているのです。実はこれ、「運盛り(うんもり)」と呼ばれる、古くからの縁起担ぎなのです。

しかし、この風習を深く調べていくと、単なる語呂合わせや迷信ではないことが分かります。そこには、電力やガスがなかった時代、厳しい冬を健康に乗り越えるための、先人たちの知恵と経験が凝縮された、非常に合理的で実利的な習慣でもあったのです。

この記事では、冬至になぜ「ん」がつく食べ物を食べるのか、その文化的な背景と具体的な理由、そして「ん」が2つ付く「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれる食べ物のリストを一つ一つ丁寧に解説します。さらに、冬至のもう一つの主役である「柚子湯(ゆずゆ)」について、その由来から科学的な効能、安全な入り方まで、私が学んだことを詳しく、深く掘り下げてご紹介します。

記事のポイント
  • 冬至に「ん」がつく食べ物を食べる「運盛り」の文化的な理由
  • 「ん」が2つ付く「冬至の七種」の具体的なリストとその詳細
  • かぼちゃやこんにゃくなど、各食べ物に込められた縁起と実利
  • 冬至に入る「柚子湯」の由来、効能、そして肌が弱い場合の対策

「んで 終わる 食べ物」と冬至の「運盛り」

「んで 終わる 食べ物」という検索キーワードは、実は冬至の行事食の核心に迫るものです。この風習は「運盛り」と呼ばれ、冬を乗り切るための先人の知恵と、「これから良くなる」という未来への願いが込められています。まずは、その深い背景と、選ばれた食材のリストを見ていきましょう。

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なぜ「ん」がつく食べ物を食べるの?

冬至に「ん」のつく食べ物を食べるのは、「運(うん)」を呼び込むためとされています。これは「運盛り(うんもり)」と呼ばれる、非常にポジティブな縁起担ぎの風習です。

この風習の背景には、冬至という「日」の特性と、日本語の「ん」という「音」が持つ二重の意味が、見事に組み合わさっています。

一陽来復(いちようらいふく)と冬至

冬至は、ご存知の通り、北半球において一年で最も昼が短く、夜が長い日です。天文学的には、太陽が天球上で最も南に来る日であり、地上に降り注ぐ太陽の力が最も弱まる日を意味します。

昔の人々にとって、太陽の力が弱まることは、生命力の衰弱、ひいては「死」を連想させる、不安な時期でもありました。しかし、彼らはこれを単なる「終わり」ではなく「始まり」の節目と捉えました。この日を境にして、再び昼が長くなっていく(=太陽の力が蘇っていく)からです。

このことから、冬至は「太陽が生まれ変わる日」とされ、陰が極まって陽に転じる「一陽来復(いちようらいふく)」の象徴とされました。「悪いこと(陰)が続いても、必ず良いこと(陽)が戻ってくる」という、何よりも強い希望に満ちた日でもあったのです。世界各地の冬至祭(クリスマスなどもその一つと言われます)も、この太陽の再生を祝うお祭りです。

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「ん」が象徴する「終わり」と「運」

一方で、「ん」という音(撥音)は、日本語の音韻において非常に特殊な位置を占めます。五十音図では最後(「わ・を・ん」)に置かれ、「いろはにほへと」の47文字にも含まれず、その後に付け加えられる形で「ん」で終わります。このことから、「ん」は物事の「終わり」や「締めくくり」を象徴する音とみなされました。

この二つが結びつきました。
「一年の終わり」であり「運気が転じる節目」である冬至の日に、「物事の終わり」を象徴する「ん」がつく食べ物を食べることで、一つのサイクルを厳かに締めくくります。

そして同時に、「ん」を「運(うん)」にかけて、新しく訪れる陽(太陽)のサイクルと共に、自分たちの新たな「運」を呼び込む。そんな儀式的な意味合いを持つようになったのです。

つまり、「運盛り」は、太陽の再生という自然界の大きなサイクルに自分たちの運気を重ね合わせ、「ここから運気が上昇していくぞ」と自らを元気づけ、祝うための、素晴らしい知恵であり文化だったと言えますね。

「ん」が2つ付く「冬至の七種」リスト

「運盛り」の中でも、特に縁起が良いとされるのが、「ん」が2回つく食べ物です。より多くの「運」を呼び込める(運=ん が重なる)と考えられたからでしょう。これらは「冬至の七種(とうじのななくさ)」と呼ばれています。(「七草」と書くこともあります)

「春の七草」が、お正月の御馳走で疲れた胃を休め、冬に不足しがちな青菜を補給する「癒し」と「デトックス」の風習であるのに対し、「冬至の七種」は、これから訪れる本格的な冬の寒さや栄養不足に備え、体を温め、免疫力を高め、風邪を予防するための「備え」と「栄養補給」の食材群で構成されているのが最大の特徴です。

まさに、「縁起(語呂合わせ)」と「実利(先人の知恵)」が融合した、完璧なラインナップと言えます。

【早見表】冬至の七種(ななくさ)の縁起と実利

「ん」が2つ含まれる7種類の食べ物と、それぞれに込められた「縁起」と「実利(栄養・効能)」を一覧にまとめました。単なる語呂合わせではなく、各食材が冬を越すために重要な役割を持っていたことがよく分かります。

食べ物
(漢字)
読み方
(ふりがな)
含まれる
「ん」
縁起
(「ん」以外)
主な栄養・効能
(実利)
南瓜なんきん2(特になし)風邪予防、
ビタミンA(カロテン)・C・E
蓮根れんこん2穴があり
「将来の見通しが良い」
ビタミンC(加熱に強い)、
食物繊維、タンニン
人参にんじん2縁起の良い赤い色
(厄除け)
β-カロテン(ビタミンA)、
風邪予防
銀杏ぎんなん2(特になし)ビタミンB群・C、
咳止め・去痰(漢方)
金柑きんかん2「金冠」に通じ、
富・金運の象徴
ビタミンC、
ヘスペリジン、
喉の不調改善
寒天かんてん2(特になし)食物繊維(水溶性)、
整腸作用(デトックス)
饂飩うんどん
(うどん)
2「運鈍根(うんどんこん)」
に通じる
体を温める、
免疫力向上、
消化が良い
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冬至にかぼちゃ(なんきん)を食べる理由

冬至の七種の筆頭であり、現代において最も広く知られ、実践されている食べ物が「かぼちゃ」です。
かぼちゃは古く「なんきん」と呼ばれていたため、「ん」が2つ付く「運盛り」の食材とされました。

この風習がこれほどまでに広まったのには、他の七種と比べても突出して「実利的」な理由があり、それが人々の記憶に強く刻まれたからだと考えられます。

なぜ「なんきん」と呼ばれる?

かぼちゃの語源には諸説あります。一般的には、天文年間にポルトガル船がカンボジア(Cambodia)から持ち込んだとされ、その産地名が訛って「かぼちゃ」と呼ばれるようになった説が有力です。

一方で、「なんきん」という呼び方は、それとは別の経路、例えば中国の南京(ナンキン)を経由して伝わった品種があった、あるいは「南京渡来の珍しいもの」といった意味合いで、異国のものへの憧憬を込めて使われていたようです。冬至の行事食としては、この「なんきん」という呼び名が「ん」が2つ付くことから重視されました。

夏野菜なのに冬に食べる、その「実利」

かぼちゃの最大の強みは、その圧倒的な保存性です。
かぼちゃは本来、夏から秋にかけて収穫される夏野菜です。しかし、丸ごとのままであれば、風通しの良い涼しい場所(昔の家屋でいえば土間や床下など)で2〜3ヶ月という長期保存が可能でした。

新鮮な緑黄色野菜が手に入らなくなる冬至の時期(12月下旬)に、夏に蓄えた太陽の恵みをそのままビタミン源として食べることができた、数少ない貴重な食材だったのです。「夏野菜を冬に食べる」という行為自体が、栄養が枯渇する時期を乗り切るための、生活の知恵そのものでした。

かぼちゃの栄養(風邪予防の科学的根拠)

「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」という言い伝えは、栄養学的に見ても非常に理にかなっています。かぼちゃには、冬の免疫力を支えるビタミン類が豊富に含まれています。特に注目すべきは以下の3つです。

  • ビタミンA(β-カロテン):
    皮膚や喉、鼻などの粘膜の健康を維持し、ウイルスの侵入を防ぐ第一のバリア機能を強化します。
  • ビタミンC:
    白血球の働きを助け、免疫システム全体の機能を高めます。
    抗酸化作用も強力です。通常、ビタミンCは熱に弱いですが、かぼちゃの場合はデンプン質に守られており、加熱しても比較的壊れにくいのが特徴です。
  • ビタミンE:
    「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用で細胞の老化を防ぎ、血行を促進します。
    体が温まることで、免疫細胞の活動も活発になります。

これらビタミンA・C・Eは、その頭文字をとって「ビタミンACE(エース)」と呼ばれることもあり、お互いに協力しあって抗酸化作用を高める、強力なトリオです。

特にビタミンA(β-カロテン)とビタミンEは脂溶性(油に溶けやすい性質)です。油と共に調理する(炒め物、揚げ物、または煮物に油を少し垂らす、ごま和えにするなど)ことで、体内への吸収率が格段にアップします。かぼちゃの煮物や天ぷらは、栄養面でも非常に効率的な食べ方だったのですね。

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れんこんと人参の縁起と栄養

「なんきん」に次いで、食卓でもおなじみの根菜が「れんこん」と「にんじん」です。これらも「ん」が2つ付く重要な「運盛り」食材であり、おせち料理にも使われるなど、ハレの日の食卓に欠かせない存在です。

れんこん(蓮根):未来を見通す縁起物

れんこん(蓮根)も「ん」が2つ付きます。
れんこんといえば、シャキシャキとした独特の食感と、たくさんの穴が空いているのが特徴ですね。この穴から「将来の見通しが良い」とされ、お正月のおせち料理にも欠かせない、非常に縁起の良い食材です。

また、れんこんは仏教で極楽浄土に咲く花として神聖視される「蓮(はす)」の地下茎(根)です。清らかな花が、汚れた泥の中から育つことから、「清廉潔白」や「苦難の末の成果」の象徴ともされます。冬至という「陰が極まる」日に、泥から育つれんこんを食べることは、まさに「一陽来復」の思想とも深く通じます。

栄養面では、ビタミンCが非常に豊富です(みかんと同程度とも言われます)。面白いことに、れんこんの主成分であるデンプン質がビタミンCを保護しているため、加熱してもビタミンCが壊れにくいという、野菜としては珍しい利点があります。さらに、ポリフェノールの一種である「タンニン」も含み、抗酸化作用や消炎作用、古くは止血作用もあるとされてきました。

れんこんが使われる「おせち料理」も、一つ一つの食材に縁起の良い意味が込められています。れんこんのように、日本の行事食は「縁起(精神的な支え)」と「栄養(実利的な支え)」が密接に結びついていることが多いですね。

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にんじん(人参):厄除けの赤と万能の栄養

にんじん(人参)も「ん」が2つです。
特に冬に出回る金時人参(京人参)に代表されるその鮮やかな「赤色」は、古くから魔除け・厄除けの色とされてきました。神社の鳥居や還暦のちゃんちゃんこ、お祝い事の赤飯など、「赤」は神聖な力や生命力を象徴する色として、ハレの日の食卓や儀式で大切にされてきたのです。

栄養価の面では、「なんきん(かぼちゃ)」と同様に、冬の免疫力維持に直結します。
β-カロテンの含有量が突出しており、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、粘膜を保護し風邪の予防に寄与します。β-カロテンは皮のすぐ下に最も多く含まれるため、栄養を効率的に摂取するには、よく洗って皮ごと調理するのがおすすめです。皮ごと使ったきんぴらなどは、まさに理にかなった調理法ですね。

金柑と銀杏、寒天とうどん

七種の後半は、個性豊かなラインナップです。果物から漢方的な側面を持つもの、そしてデトックスや保温を担うものまで、多角的に健康を支えようという古人の意図が感じられます。

きんかん(金柑):金運と健康運のダブルパワー

きんかん(金柑)は、その名前が「金冠(きんかん)」に通じることから、「財宝」や「富」を意味する「金運」の象徴とされる、非常に縁起の良い果物です。

実利の面でも素晴らしく、果物としては珍しく皮ごと食べられるのが最大の特徴です。ビタミンCは実よりも皮に豊富に含まれており、皮ごと食べることでその恩恵を丸ごと受けられます。さらに、皮に含まれるポリフェノールの一種「ヘスペリジン(ビタミンP)」は、毛細血管を強くし、血流を改善する効果が期待されています。

また、古くから咳止めや喉の不調を改善する民間薬としても用いられてきました。きんかんの甘露煮は、まさにその知恵の結晶ですね。まさに「運(ん)」「金運(金冠)」「健康運(喉のケア)」の三つの運を兼ね備えた、冬にぴったりの果物です。

ぎんなん(銀杏):栄養価の高さと注意点

ぎんなん(銀杏)も「ん」が2つです。
茶碗蒸しや炒め物で独特のもっちりとした食感と風味が楽しめる、秋の味覚ですね。栄養面ではビタミンB群やC、カリウムなどが豊富で、漢方の世界でも古くから咳止めや去痰(たん)、夜尿症・頻尿の改善などに用いられてきました。

ただし、冬至の七種の中で唯一、食べる量に明確な注意点が存在する食材です。これは非常に重要な知識ですので、ぜひ覚えておいてください。

銀杏(ぎんなん)の食べ過ぎに注意

銀杏は栄養価が高い反面、「メチルピリドキシン(MPN)」という成分(ビタミンB6の類似物質)を含んでいます。この成分は、体内でビタミンB6の働きを妨げる(拮抗する)作用があり、一度に食べ過ぎるとビタミンB6欠乏症と同様の中毒症状(めまい、嘔吐、腹痛、けいれんなど)を引き起こす可能性があります。

特に、体の小さいお子さんや、ビタミンB6の蓄積が少ない方、アレルギー体質の方は注意が必要です。

【摂取目安(あくまで一般的な目安です)】

  • 大人の場合:
    1日に10個程度まで
  • 子供の場合:
    1日に数個(3〜5個)程度まで、または5歳以下のお子さんには食べさせない方が安全です。

銀杏は加熱しても中毒成分(MPN)は減少しません。美味しいものですが、「運盛り」として少量をありがたく頂く、というスタンスが良いかもしれませんね。心配な方は、かかりつけ医や専門家にご相談ください。
(参考:日本中毒情報センター「ぎんなんの食べ過ぎに注意しましょう」

かんてん(寒天):体を内側から「大掃除」

かんてん(寒天)は、他の食材がビタミン補給や保温といった「足し算」であるのに対し、体内浄化という「引き算」の役割を担います。テングサやオゴノリといった海藻が原料で、その製造法が「寒」の字の由来です。

寒天は、煮出した海藻の煮汁を固め、それを冬の屋外で凍結と乾燥を繰り返させて作ります。まさに冬の寒さを利用した保存食であり、「寒い」季節に食べるのにふさわしい食材とも言えます。

その成分の大部分は「アガロース」という水溶性の食物繊維です。この食物繊維が、体内で水分を吸収して膨らみ、腸の働きを活発にしてスムーズな排便を促します。また、糖の吸収を穏やかにしたり、血中コレステロールの増加を抑制したりする働きも期待できます。新しい「運」を迎える「一陽来復」の前に、体の大掃除(デトックス)をして内側から身を清める、という非常に合理的な目的を持った食材です。

うんどん(饂飩):体を温め、根気を養う

最後の七種は、うどんです。「ん」が2つ含まれるよう、あえて「うんどん」と呼ばれます。
縁起としては、成功するために必要な3つの要素「運(うん)」「鈍(どん=粘り強さ)」「根(こん=根気)」を合わせた「運鈍根(うんどんこん)」という言葉に通じるとも言われます。「運」だけでなく、地道な努力(鈍と根)も必要だという、深い教えが込められていますね。

実利的な面では、何よりも温かい「うんどん」を食べることで体が芯から温まります。体温が1度上がると免疫力は大きく向上すると言われており、風邪の予防や撃退に直接的に役立ちます。また、うどんの主成分である小麦デンプンは消化吸収が良いため、体調がすぐれない時や風邪気味の時にも適しています。

冬至の日に、かぼちゃ(なんきん)や人参(にんじん)を入れた「煮込みうんどん」を食べれば、七種のうち3種類を一度に摂ることができ、栄養満点、縁起も満点の冬至メニューになりますね。

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「んで 終わる 食べ物」以外の冬至の風習

「ん」がつく食べ物は「冬至の七種」だけではありません。また、「運盛り」と並んで冬至に欠かせない、もう一つの大切な風習があります。それが「柚子湯」です。ここでは、七種以外の「ん」がつく食べ物と、冬至の夜の楽しみである柚子湯についてご紹介します。

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体の砂払い「こんにゃく」

「冬至の七種」には入りませんが、「こんにゃく」も「ん」がつく食べ物として、冬至に食べられることがあります。特に、冬至にこんにゃくを食べる風習は「体の砂払い(すなはらい)」と呼ばれます。

これは、現代のように医学が発達していなかった時代、体内に溜まった不要なもの(老廃物や毒素)を「砂」と表現し、こんにゃくを食べることで、それが掃除されて体外に排出される、と信じられてきたためです。

「かんてん」と「こんにゃく」のWデトックス

もちろん、本当に砂が排出されるわけではありませんが、こんにゃくの主成分である「グルコマンナン」(不溶性食物繊維)が、腸の老廃物をからめ取って便のかさを増やし、排出を促す働きを、昔の人は経験的に知っていたのでしょう。

「かんてん(寒天)」が水溶性食物繊維(便を柔らかくする)であるのに対し、「こんにゃく」は不溶性食物繊維(便のかさを増やす)が主体です。奇しくも「冬至の七種」と「砂払い」で、両方の食物繊維をバランスよく摂取することになり、腸内環境を整えるという点で非常に理にかなっています。年末の大掃除の前に、まず「体の大掃除」をするという、先人の合理的な考えがうかがえます。

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厄払いとかぼちゃの「いとこ煮」

冬至によく食べられる郷土料理の代表格に「いとこ煮」があります。これは、かぼちゃ(なんきん)と小豆(あずき)を一緒に炊いた料理で、地域によっては「いとこ炊き」とも呼ばれ、味付け(塩味、醤油味、甘い味)も様々です。

なぜ「いとこ」なのか、その語源には諸説あります。

  • 材料の野菜を「追い追い(おいおい)」煮ていく(先に硬いもの、後から柔らかいもの)から、「おいおい」が「甥」に通じる。
  • 野菜を「銘々(めいめい)」に煮るから、「めいめい」が「姪」に通じる。
  • (いとこ同士のように)似たような材料(根菜など)を集めて煮るから。

など、様々ですが、いずれも風情のある由来ですね。

この「いとこ煮」は、冬至の縁起要素を複数組み合わせた、非常に強力な行事食と言えます。

  1. なんきん(かぼちゃ):
    「ん」が2つ含まれるため、「運盛り」の条件を満たします。
  2. 小豆(あずき):
    小豆の「赤い色」は、古来中国の思想において邪気(鬼や疫病)を払う力があると信じられています。
    お祝い事の「赤飯」も、単にめでたいだけでなく、この「厄除け」の意味合いが強くあります。

したがって、「いとこ煮」を食べることは、「運を呼び込む(運盛り)」と「厄を払う(邪気払い)」を同時に達成する、極めて合理的で縁起の良い風習なのです。かぼちゃの甘みと小豆の風味が合わさった、素朴で美味しい料理でもあります。小豆自体もサポニンやポリフェノール、食物繊維を豊富に含み、これもまた実利的な食材です。

(※同様の理由から、冬至に「小豆粥(あずきがゆ)」を食べて厄払いをする地域もあります。)

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冬至に柚子湯(ゆずゆ)に入る理由

「運盛り」と並ぶ、もう一つの冬至の代表的な風習が「柚子湯(ゆずゆ)」です。
スーパー銭湯などでも冬至の日には柚子湯イベントが行われることが多く、現代にも色濃く残る風習ですね。これにもまた、縁起(文化)と実利(科学)が融合した、深い理由があります。

巧みな語呂合わせと「お清め」

柚子湯の由来として最も有名なのは、江戸時代の銭湯が客寄せのために始めたとされる、江戸っ子らしい「粋」な語呂合わせです。

柚子湯に込められた「語呂合わせ」

  • 「冬至(とうじ)」 → 「湯治(とうじ)」:湯に入って体を癒す(健康祈願)
  • 「柚子(ゆず)」 → 「融通(ゆうずう)が利く」:万事うまくいくように(開運祈願)

また、日本では古くから、季節の変わり目(節句)に香りの強い植物を湯に入れて浸かる「お清め」の風習がありました。例えば、5月5日の端午の節句の「菖蒲湯(しょうぶゆ)」が有名ですね。

植物の持つ強い香りは、目に見えない邪気や魔物を払う力があると考えられていました。柚子は特に香りが強い柑橘類です。そのため、「一陽来復」という太陽の生まれ変わりの日に、柚子の強い香りで身を清め、新年を迎える準備をする、という意味合いも持っていたのです。

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柚子湯の効能と肌が弱い場合の入り方

柚子湯は、こうした語呂合わせや縁起だけでなく、冬の健康維持において非常に実用的な効果を持つことが、現代科学でも証明されています。

柚子湯の科学的な効能(実利)

柚子湯が「風邪をひかずに冬を越せる」と言われるのには、柚子の皮や果汁に含まれる成分が、お湯に溶け出すことで様々な恩恵をもたらすからです。

1. 血行促進・保温(リモネンなど)
柚子の皮に豊富に含まれる精油成分「リモネン」などが、皮膚の毛細血管を刺激し、血行を促進します。これにより体が芯から温まり、冷え性の改善、肩こりや神経痛の緩和が期待できます。また、皮の油分(リモネン)が肌の表面に薄い膜を作り、入浴後の水分蒸発を防ぐバリアとなるため、湯冷めをしにくい効果もあります。

2. 美肌効果・保湿(ビタミンC・ペクチン)
柚子はビタミンCも豊富です。湯船に溶け出したビタミンCが肌に潤いを与え、シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑えるとも言われています。さらに、種の周りにあるヌルヌルとした成分「ペクチン」には、天然の保湿効果や肌にハリを与える効果も期待できます。

3. リラックス効果(芳香成分)
柚子の爽やかで強い香り(芳香)には、リラックス作用があり、自律神経を整える効果が期待できます。忙しい年末のストレスを和らげ、心身ともにリフレッシュさせてくれる、天然のアロマテラピーですね。良質な睡眠にも繋がります。

柚子湯の正しい入り方と注意点

柚子湯の実践方法にはいくつかバリエーションがあります。「柚子を丸ごと」湯船に浮かべる風情を楽しむ方法、半分や輪切りにして「切って入れる」方法(香りが立ちやすい)、または「皮だけ」を入れる方法などです。香りを強く楽しみたい場合は、切ったり、皮に切り込みを入れたりすると良いでしょう。

ただし、柚子湯には注意点もあります。特に肌がデリケートな方は、以下の点を心に留めておいてください。

肌が敏感な方・お子様の柚子湯 注意点と対策

柚子の皮に含まれる「リモネン」や「シトラール」といった精油成分は、血行を促進する一方で、肌への刺激となる場合があります(ピリピリ感、かゆみ、赤みなど)。特に肌が敏感な方や小さなお子さん、アトピー性皮膚炎などの既往がある方は注意が必要です。

【刺激を和らげる対策】

  • 丸ごと入れる:
    柚子を切ったり揉んだりせず、「丸ごと」のまま入れる。
    これだけでも香りは十分楽しめますし、成分の溶出が穏やかになります。
  • ネットに入れる(推奨):
    ガーゼや木綿のネット、または洗濯ネットなどに柚子を(丸ごと、または切って)入れ、果皮や果汁、種が直接肌に触れないようにする。追い焚き機能があるお風呂の配管保護にもなります。
  • 入浴時間を短めにする:
    まずは短時間から試してみる。
  • 入浴後にシャワーで流す:
    湯船から出た後、刺激成分が肌に残らないよう、シャワーで軽く洗い流す。
  • 入浴後の保湿:
    お風呂上がりは、刺激の少ない保湿剤でしっかりとケアをする。

私も肌が少し弱い方なので、いつもガーゼの袋に柚子を数個(丸ごと)入れて楽しんでいます。これだけでも浴室全体に素晴らしい香りが広がり、十分に冬至の気分を味わえますよ。

もし強い刺激や赤みが出た場合は、すぐに入浴を中止し、シャワーでよく洗い流してください。症状が続く場合は、皮膚科の専門医にご相談ください。

「んで 終わる 食べ物」で冬至の開運を

こうして詳しく見てみると、冬至の行事食(冬至の七種、こんにゃく等)や柚子湯は、単なる語呂合わせや迷信ではないことが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

これらは、太陽の力が最も弱まり、寒さと栄養不足が厳しくなる冬を乗り切るため、先人たちが体系化した「知恵のパッケージ」であり、心と体の両方に作用する、非常に優れたセルフケアの習慣です。

このパッケージは、以下の3つの合理的な要素から構成されています。

  1. 実利(科学・栄養学):
    「なんきん」や「にんじん」によるビタミン補給、「うんどん」や「柚子湯」による保温と血行促進。
  2. 浄化(デトックス):
    「こんにゃく」や「かんてん」による体内の老廃物排出(砂払い)、「柚子湯」や「小豆」による体外の邪気払いや厄除け。
  3. 縁起(精神論):
    「ん=運」、「れんこん=見通し」、「きんかん=金運」といった言葉の力を借りて、「一陽来復」という運気の上昇日を祝い、新年に向けた希望を新たにする。

現代の私たちは、冬でも新鮮な野菜を手に入れられますし、暖房の効いた部屋で過ごすことができます。しかし、こうした時代だからこそ、季節の節目に立ち止まり、昔ながらの知恵に倣って自らの健康を願い、運気の好転を祈るという、古くからの営みは、かえって新鮮で価値のあるものに感じられます。これは、現代のウェルビーイング(心身ともに健康で、幸福な状態)の考え方にも深く通じるものだと思います。

今年の冬至は、ぜひ「ん」のつく食べ物で「運盛り」をして、柚子湯で温まりながら、この一年を無事に過ごせたことに感謝し、新しい年に向けた無病息災と開運を願ってみてはいかがでしょうか。

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