冬の訪れとともに街全体がきらびやかな光に包まれるイルミネーションの季節。
その幻想的な光景を目の当たりにすると、誰もがその感動を写真に残したいと思うものです。
スマートフォンやデジタルカメラを手に取り、いざシャッターを切ってみる。
しかし、画面に映し出された画像を見て、がっかりした経験はないでしょうか。
「あれ?目で見た時はもっとキラキラしていたのに、なんだかただの白い点の集まりになってしまった」
「背景が真っ暗で、雰囲気が出ない」
「SNSで見かけるような、光が流れるような写真が撮れない」
そんな悩みを抱えている人に「NDフィルター(減光フィルター)」というものがあります。
「夜にサングラスのような暗いフィルターを付けるの?」と、耳を疑いたくなります。
光が足りない夜に、さらに光を減らすなんてどういうことなのかと思いますよね。
しかし、実際に使ってみると、その効果に驚くことになります。
NDフィルターは単に画像を暗くする道具ではなく、カメラの設定値を自在に操り、肉眼では捉えきれない「時間の流れ」や「光の軌跡」を可視化するための魔法のアイテムなののです。
混雑したイルミネーションスポットから人の姿を消し去ったり、車のライトを美しい光の川に変えたりできるのは、決して高価なカメラの性能だけによるものではありません。
適切なフィルターワークこそが、プロのような作品を生み出す鍵となります。
この記事では、「夜景撮影がうまくいかない」と悩む方に向けて、イルミネーション撮影におけるNDフィルターの重要性から、具体的な選び方、そして驚くような撮影テクニックまでを徹底的に解説します。
専門用語ばかりの解説書とは違い、今日から実践できる生きた知識をお届けします。
- イルミネーション撮影でNDフィルターを使う光学的な理由と具体的なメリットが深く理解できます
- 撮影シーンや表現したいイメージに合わせた最適なフィルター濃度と種類の選び方を迷わず判断できるようになります
- 長時間露光による「人消し」や光跡撮影、水面反射の強調など、具体的な撮影手順をマスターできます
- 一眼カメラだけでなく、スマートフォンでの本格的なNDフィルター活用術や他のフィルターとの併用テクニックを知ることができます
イルミネーションのためのNDフィルターの基本知識と光学的応用
このセクションでは、なぜ夜の撮影であえて光を減らす必要があるのか、そのメカニズムと基礎理論について掘り下げて解説します。NDフィルターの役割を正しく理解することが、美しい夜景写真を撮るための第一歩です。

NDフィルターはなぜ夜景撮影で必要か
夜景やイルミネーションの撮影において、レンズに入る光を物理的に減少させる「NDフィルター(Neutral Density Filter)」を使用することは、直感的には矛盾しているように感じられます。通常、夜間撮影は「いかに光を集めるか」という戦いであり、明るいレンズや高感度性能が求められる世界だからです。
しかし、イルミネーション撮影には「減光のパラドックス」とも言うべき特殊な事情が存在します。現代のイルミネーションの主流であるLED電球は、省電力でありながら極めて高い輝度(明るさ)を持っています。一方で、夜空や建物の陰影など、背景部分は非常に暗い状態です。この「極端に明るい点光源」と「極端に暗い背景」が同居するハイコントラストなシーンこそが、カメラのイメージセンサーにとって最も苦手な状況なのです。
もし、背景の暗さに合わせて露出(明るさ)を上げれば、LEDの光は強すぎて白く飛び、色味も失われたただの白い点になってしまいます。逆に、LEDの明るさに合わせて露出を下げれば、背景は真っ暗になり、イルミネーションが空中に浮いているような不自然な写真になってしまいます。ここでNDフィルターの出番です。

NDフィルターを使用する最大の目的は、「適正露出を得るための選択肢を増やすこと」にあります。光量を物理的に落とすことで、カメラの設定において以下の2つの自由を手に入れることができます。
- シャッター速度の自由:
光を減らす分、シャッターを長く開けておくことができます。
これにより、動いている光(車のライトなど)を線として描いたり、水面を滑らかにしたりする「時間表現」が可能になります。 - 絞り(F値)の自由:
光を減らす分、絞りを開く(F値を小さくする)ことができます。
これにより、背景を美しくぼかし、イルミネーションの光を大きな玉ボケとして表現することが可能になります。
つまり、NDフィルターは単なるサングラスではなく、カメラという機械の物理的な限界を突破し、撮影者の意図する「時間」と「ボケ」をコントロールするための必須ツールなのです。
フィルターの種類と濃度ごとの選び方
NDフィルターには様々な濃度(番手)があり、それぞれ減光する量が異なります。どの濃度を選べば良いかは、撮影したいシーンや表現したい世界観によって明確に分かれます。私が長年の撮影経験の中で体得した、イルミネーション撮影における各濃度の特性と使い分けを詳細に解説します。
| ND番号 | 光学濃度 | 減光段数 | 透過率 | 主なイルミネーション適用事例と 私の使用感 |
|---|---|---|---|---|
| ND2 - ND4 | 0.3 - 0.6 | 1 - 2段 | 50% - 25% | 【微調整・開放撮影用】 比較的効果は弱めですが、 非常に明るい大口径レンズ(F1.4など)を 開放で使いたい時に重宝します。 街中の明るいイルミネーションで、 シャッター速度を落としすぎずに ボケを作りたい時に最適です。 |
| ND8 - ND16 | 0.9 - 1.2 | 3 - 4段 | 12.5% - 6.25% | 【夜景撮影のスタンダード】 最も汎用性が高いゾーンです。 数秒〜10秒程度の露光が可能になり、 車のテールランプを 適度な長さの光跡として描いたり、 水面を少し落ち着かせたりするのに 使います。 最初の1枚として強くおすすめします。 |
| ND32 - ND64 | 1.5 - 1.8 | 5 - 6段 | 3.125% - 1.56% | 【長時間露光・人消し入門】 ここからは本格的な長秒露光の世界です。 30秒〜1分程度の露光が可能になり、 「人消し」効果が出始めます。 また、水面を完全に鏡のように 平滑化したい場合にも必須です。 三脚が確実に必要になります。 |
| ND400 - ND1000 | 2.6 - 3.0 | 9 - 10段 | 0.2% - 0.1% | 【特殊表現・日中兼用】 夜間に使うと数分の露光が必要になり、 真っ暗闇を撮るような感覚になります。 完全に無人の世界を作りたい場合や、 雲の流れをダイナミックに 表現したい場合に使用する、 上級者向けの濃度です。 【特殊表現・日中兼用】 夜間に使うと数分の露光が必要になり、 真っ暗闇を撮るような感覚になります。 完全に無人の世界を作りたい場合や、 雲の流れをダイナミックに 表現したい場合に使用する、 上級者向けの濃度です。 |

初心者が最初に買うべき1枚は?
迷ったら間違いなく「ND8」または「ND16」をおすすめします。ND8であれば、夜景だけでなく、日中の滝撮影や動画撮影にも流用でき、コストパフォーマンスが非常に高いです。ND64以上はファインダーが暗くなり扱いが難しくなるため、慣れてきてから買い足すのが賢い選択です。
夜景長時間露光の原理
ここでは少しテクニカルな話になりますが、NDフィルターを使ってどのように「長時間露光」を実現するのか、その原理を理解しておきましょう。これを理解すると、現場での設定に迷いがなくなります。
カメラの露出(写真の明るさ)は、「絞り(F値)」「シャッター速度」「ISO感度」の3つの要素の組み合わせで決まります。これを「露出の三角形」と呼びます。夜景撮影では、ノイズを減らすためにISO感度を低く(ISO100など)固定するのが一般的です。すると、残る変数は「絞り」と「シャッター速度」の2つになります。
例えば、あるイルミネーションスポットで、適正露出が以下の設定だったとします。
【設定A:フィルターなし】ISO100 / F8 / シャッター速度 1秒
ここで、車の光跡をもっと長く伸ばしたいと思い、シャッター速度を8秒にしたいとします。しかし、そのままシャッター速度だけを8秒にすると、光が8倍多く入ってきてしまい、写真は真っ白に白飛びしてしまいます。この「増えすぎた光」を相殺するためにNDフィルターを使います。
ND8(3段減光)を装着すると、入ってくる光の量は1/8になります。これにより、理論上シャッター速度を8倍長くしても、最終的な写真の明るさは変わりません。
【設定B:ND8使用】ISO100 / F8 / シャッター速度 8秒

このように、NDフィルターは「光を減らす」というマイナスの作用を利用して、「時間を延ばす」というプラスの効果を生み出しているのです。この換算の考え方は、フィルターメーカーの公式サイトなどでも詳しく解説されており、計算アプリなども存在します。
(出典:Kenko Tokina『NDフィルターでプロ並み写真が撮れる - 選び方・使い方ガイド』)
イルミネーション撮影で回折現象を回避する方法
風景写真や夜景写真では、「全体にピントを合わせたい(パンフォーカス)」という理由から、絞りをF16やF22まで極端に絞り込んで撮影する方がいらっしゃいます。しかし、これは画質の観点からはあまり推奨できません。なぜなら「回折現象(Diffraction)」が発生するからです。
回折現象とは、光が狭い隙間(絞りの穴)を通る時に、波の性質によって広がってしまう現象のことです。絞りを絞りすぎると、この回折光の影響が強くなり、写真全体の解像度が低下し、なんとなくボヤッとした眠い画質になってしまいます。これを「小絞りボケ」とも呼びます。
特に最近の高画素デジタルカメラでは、F11を超えると回折の影響が目立ち始めます。しかし、シャッター速度を遅くするために絞らざるを得ない状況もあるでしょう。そんな時こそNDフィルターが救世主となります。

適切な濃度のNDフィルターを使用すれば、無理にF22まで絞り込まなくても、レンズの解像性能が最も高くなる「スイートスポット」(一般的にF5.6〜F8前後)を使用したまま、希望のスローシャッターを切ることができます。「最高画質で長時間露光を行う」ためには、絞りではなくフィルターで光量を調整するのが正解なのです。
NDフィルターとフリッカー対策のためのシャッター速度
イルミネーション撮影で多くの人を悩ませるもう一つの問題が「フリッカー現象」です。撮影した写真を見返すと、イルミネーションの一部が暗くなっていたり、縞模様が入っていたり、色が変になっていたりすることがあります。これは、LED光源の特性に起因します。
LEDは直流点灯しているように見えて、実は人間の目には感知できない超高速な点滅(PWM制御など)を繰り返しています。また、家庭用電源から給電されている場合、東日本では50Hz(1秒間に100回点滅)、西日本では60Hz(1秒間に120回点滅)の周期で明滅しています。
もし、カメラのシャッター速度がこの点滅周期よりも速い場合(例:1/250秒、1/500秒など)、シャッターが開いているその一瞬にたまたまLEDが「消灯」しているタイミングが重なると、その部分が黒く写ってしまうのです。
フリッカーを防ぐ最も確実な方法は、シャッター速度を遅くすることです。一般的には1/100秒以下、安全を見るなら1/50秒以下などで撮影すれば、点灯と消灯のサイクルが平均化され、きれいに写ります。
しかし、ここでジレンマが発生します。「背景をボカしたいから、明るい単焦点レンズ(F1.4)を開放で使いたい」という場合です。夜とはいえ、F1.4まで開けると光が入りすぎるため、カメラは露出を合わせようとしてシャッター速度を1/500秒や1/1000秒まで速くしてしまいます。これではフリッカーが盛大に発生してしまいます。

この問題を解決するのがND4〜ND8程度の薄いNDフィルターです。フィルターで光を落とすことで、F1.4の開放絞りを維持したまま、シャッター速度を1/60秒などの「フリッカーが出ない安全圏」まで強制的に遅くすることができます。ボケ表現とフリッカーレスを両立させるための、プロも使う必須テクニックです。
可変NDと固定NDのメリット デメリット比較
NDフィルターを購入しようとすると、「濃度が固定されているタイプ(固定ND)」と「くるくる回して濃度を変えられるタイプ(可変ND・バリアブルND)」のどちらにすべきか迷うと思います。それぞれの特徴をイルミネーション撮影の視点で比較します。
固定NDフィルター (Fixed ND)
1枚のガラスに減光処理が施されたシンプルなタイプです。
- メリット:
構造が単純なため光学性能が高く、画質の劣化や色被り(色が転ぶ現象)が最小限です。
広角レンズで使用しても画面にムラが出にくいのが最大の特徴です。 - デメリット:
状況が変わるたびにフィルターをねじ込んで交換する手間がかかります。
シャッターチャンスを逃す可能性があります。 - 結論:
「絶対に画質を妥協したくない」
「広角レンズで風景全体を撮りたい」
という方におすすめです。
可変NDフィルター (Variable ND)
2枚の偏光膜を重ね合わせ、回転させることで濃度を無段階(例:ND2〜ND400)に調整できるタイプです。
- メリット:
フィルター交換の手間がなく、リングを回すだけで明るさを微調整できます。
構図を決める時は薄くして見やすくし、撮る瞬間に濃くするといった使い方ができ、非常に便利です。 - デメリット:
構造上、広角レンズで使用して濃度を上げすぎると、画面に「×(バッテン)状の黒いムラ」が発生することがあります。
また、安価な製品は色が黄色っぽくなったり青っぽくなったりしやすいです。 - 結論:
「レンズ交換やフィルター交換の手間を減らしたい」
「標準〜望遠レンズメインで撮影する」
「動画も撮りたい」
という方におすすめです。
静止画で画質を最優先するなら固定NDがおすすめですが、利便性を取るなら高品質な可変NDも選択肢に入ります。

幻想的な表現を追求するイルミネーション NDフィルターの実践技法
基礎知識を身につけたところで、いよいよ実践編です。NDフィルターをカメラに装着し、現場でどのような設定や工夫を行えば「魔法のような写真」が撮れるのか、具体的な実践テクニックをステップバイステップで解説します。

NDフィルターを使った「人消し」のやり方と限界
人気のイルミネーションスポットは常に混雑しており、人を入れずに撮影するのは至難の業です。どんなに美しい構図を決めても、目の前を横切る通行人が写っては台無しだと感じることもあるでしょう。しかし、NDフィルターを使った長時間露光テクニックを使えば、まるで誰もいないかのような不思議な写真を撮ることができます。
【実践ステップ】
- 機材の準備:
ND64(6段減光)以上の濃いフィルターと、しっかりした三脚、そしてレリーズを用意します。 - 構図とピント:
フィルターを付ける前に構図を決め、ピントを合わせてMF(マニュアルフォーカス)に切り替えます。 - フィルター装着と設定:
NDフィルターを装着し、シャッター速度が20秒〜30秒以上になるように設定します。
ISOは最低感度、絞りはF8〜F11程度が良いでしょう。 - 撮影:
人が動いているタイミングを見計らってシャッターを切ります。
【なぜ消えるのか?】
カメラのセンサーは、露光時間中にずっとそこに留まっているもの(背景)は濃く記録し、移動しているもの(人)は薄く記録します。露光時間が十分に長ければ、移動する人の光は背景の光に埋もれてしまい、結果としてセンサー上では「なかったこと」になるのです。

人消しの限界と注意点
このテクニックは万能ではありません。「立ち止まってスマホを見ている人」や「ベンチに座っているカップル」など、動かない人は当然消えません。
むしろ、半透明の幽霊のように写ってしまい、不気味になることがあります。
また、白い服を着ている人や明るいライトを持っている人が通ると、その軌跡が白く残ることがあります。
完全に無人にするには、タイミングを見計らって複数枚撮影し、後で合成するなどの工夫も必要になります。
光跡や水面の平滑化を作例で解説
NDフィルターの真骨頂とも言えるのが、「動いているものを美しく描く」ことです。特にイルミネーション撮影で効果的な2つのパターンを紹介します。
1. 光跡(ライトトレイル)の描画
道路を行き交う車のヘッドライトやテールランプを、途切れない光の帯として表現します。NDフィルターを使わずにシャッター速度を長くすると、街灯やイルミネーション自体が露出オーバーで真っ白になってしまいますが、ND8〜ND16程度を使用することで、背景のイルミネーションの適正露出を保ちつつ、シャッター速度を10秒〜20秒まで延ばすことができます。
コツ:バスやトラックなど車高の高い車が通ると、高い位置にも光跡が入り、画面にボリュームが出ます。信号の変わり目を狙い、車が動き出すタイミングから停止するまでを露光すると、密度の高い光跡になります。
2. 水面のリフレクション(反射)強調
川や湖、噴水の近くにあるイルミネーションでは、水面への反射が美しいですが、風があるとさざ波が立ってきれいな鏡面になりません。ここでNDフィルター(ND64以上推奨)を使い、30秒以上の長時間露光を行います。

すると、さざ波の動きが平均化され、水面がつるんとした鏡のように静止して写ります。これにより、水面に映るイルミネーションがくっきりと浮かび上がり、現実世界とは思えない幻想的な上下対称の世界を表現できます。
ブラックミストなどソフトフィルターとの組み合わせ
最近のイルミネーション撮影のトレンドとして外せないのが、「NDフィルター」と「ソフトフィルター」の重ね付け(スタッキング)です。特に「ブラックミスト」と呼ばれる種類のフィルターが人気を博しています。
NDフィルターは「時間を操る」フィルターですが、ブラックミストは「光の質感を操る」フィルターです。これを併用することで、以下のような相乗効果が得られます。
- NDフィルターの役割:
シャッター速度を遅くし、車の光跡を流したり、通行人をブラして動感を出す。 - ブラックミストの役割:
イルミネーションの強いLED光をふんわりと拡散させ、デジタル特有のカリカリした描写を抑え、映画のワンシーンのような湿り気のある情緒的な雰囲気を加える。

ブラックミストには「No.1(強め)」や「No.05(弱め)」などの種類があります。イルミネーション撮影では、光源が多いためNo.1だと画面全体が白っぽくなりすぎることがあります。まずは効果が控えめな「No.05」から試すのがおすすめです。NDフィルターの上にねじ込んで装着しますが、広角レンズ(24mm以下など)ではフィルター枠の厚みで四隅が暗くなる(ケラレる)可能性があるので、薄枠タイプを選んだり、少しズームして撮るなどの対策が必要です。
スマホイルミネーション NDフィルターの活用法
「自分は一眼レフを持っていないから関係ない」と思っている方、ちょっと待ってください。実は最新のスマートフォンこそ、NDフィルターを活用することで劇的に写真が変わるデバイスなのです。
iPhoneやPixelなどのスマホカメラは、基本的に「絞り」が固定(F1.8などの開放状態)されています。そのため、少しでも明るい場所でシャッター速度を遅くしようとすると、すぐに露出オーバーになってしまいます。アプリで無理やりシャッター速度を遅く設定しても、画面は真っ白になるだけです。
そこで、スマホ用の「クリップ式NDフィルター」や、専用ケースに装着するタイプのNDフィルターを使用します。これらをレンズの前に装着し、Lightroom Mobileなどのマニュアル撮影対応アプリや、長時間露光専用アプリ(例:Spectreカメラ、ReeXposeなど)を使用します。

【スマホ×NDフィルターのメリット】
- RAW撮影との相性:
フィルターで適正な光量に調整したRAWデータは、編集耐性が非常に高く、後から色味や明るさを調整しても画質が荒れにくいです。 - 「疑似」ではない本物の光学効果:
スマホには「Live Photos」の長時間露光エフェクトなど、複数枚合成による疑似的な長時間露光機能もありますが、物理的なNDフィルターを使った1枚撮りの方が、解像感や自然な光のつながりにおいて勝る場合があります。
失敗しないためのピント合わせと露出決定
高濃度のNDフィルター(ND400やND1000など)を使用する際、最も多い失敗が「ピントが合っていない」「構図がズレている」というものです。濃いフィルターを付けると、カメラに入る光が極端に減るため、カメラのオートフォーカス(AF)センサーが機能しなくなり、ファインダーや背面液晶も真っ暗で何も見えなくなります。
これを防ぐための鉄板ワークフローを紹介します。
【失敗知らずの撮影手順】
- フィルター無しで準備:
まずNDフィルターを付けていない状態で三脚にカメラをセットし、構図を完璧に決めます。 - ピント合わせ:
AFでイルミネーションの明るい部分にピントを合わせます。 - ピント固定:
ピントが合ったら、レンズのスイッチやカメラの設定で「MF(マニュアルフォーカス)」に切り替えます。
これ以降、ピントリングには絶対に触れないようにします(マスキングテープで固定するのも有効です)。 - フィルター装着:
カメラを動かさないよう、そっと慎重にNDフィルターをねじ込みます。 - 露出確認と撮影:
計算したシャッター速度に設定し、レリーズや2秒セルフタイマーを使ってシャッターを切ります。
撮れた画像を再生し、拡大してピントとブレを確認します。

また、ミラーレスカメラの場合、設定で「設定効果の反映」をOFFにすると、暗い設定でも画面を強制的に明るく表示してくれる機能がある機種もありますが、NDフィルター装着時はノイズだらけで確認しにくいことが多いので、上記の手順を踏むのが最も確実です。
【まとめ】幻想的な世界を叶えるイルミネーション NDフィルター活用術
イルミネーション撮影におけるNDフィルターは、単なる「減光用アクセサリー」の枠を超え、あなたの表現力を飛躍的に拡張してくれるクリエイティブなパートナーです。目に見えるままを写す「記録写真」から、目に見えない時間の流れや光の美しさを表現する「作品写真」へとステップアップするために、これほど効果的なツールはありません。
最初はND8を使って、少しだけシャッター速度を遅くしてみることから始めてみてください。そこには、普段見慣れた街の風景とは違う、流動的で幻想的な光の世界が広がっているはずです。そして慣れてきたら、より濃いフィルターで人消しに挑戦したり、ソフトフィルターと組み合わせて独自の作風を追求したりと、楽しみ方は無限に広がります。
冬の夜の撮影は寒さとの戦いでもありますが、NDフィルターを通して描かれる光のアートは、その寒さを忘れさせてくれるほどの感動を与えてくれるでしょう。ぜひ、今年の冬はNDフィルターをポケットに忍ばせて、あなただけの輝く瞬間を切り取ってみてください。
※本記事の情報は執筆時点の一般的な知識と筆者の経験に基づいています。撮影機材の仕様や、撮影スポットでの三脚使用ルールなどは変更される場合がありますので、正確な情報は各メーカーの公式サイトや施設の案内をご確認ください。また、夜間の撮影は周囲の迷惑にならないよう配慮し、安全第一で行ってください。