七五三のシーズンが近づいてくると、カレンダーの「11月15日」という日付が妙に気になりますよね。「今年、うちの子は七五三だけど、その日に仕事休めるかな…」「この日を過ぎても大丈夫?」と心配になるお気持ち、とてもよく分かります。何を隠そう、私自身、子供の七五三のタイミングでは本当に悩みました。
上の子の時は11月にできたけど、下の子の時はどうしよう。仕事の都合やご家族のスケジュール、そして何よりお子様の体調を考えると、ピンポイントでその日にすべてを合わせるのは、現代の生活では本当に難しいものです。伝統を重んじたい気持ちと、現実的な家族の事情との板挟みです。
実際に12月にお参りしてもいいものなのか、もし年明けにするなら一体いつまで可能なのか。そもそも、時期をずらしたらご祈祷はちゃんと受け付けてもらえる?子供が楽しみにしている千歳飴は?写真は「後撮り」になるけど、何かデメリットはないの?真冬のお参りで服装はどうしよう…など、考え始めると次から次へと疑問が湧いてきますよね。
この記事では、「七五三を11月15日過ぎに行う」場合の具体的な疑問や不安について、私が徹底的にリサーチした経験を元に、時期をずらす際の具体的な注意点、年齢の数え方(数え年・満年齢)の考え方まで、できる限り詳しく解説していきます。
- 11月15日という日付にこだわる必要がない本当の理由
- 前倒し・後倒し(12月・1月)それぞれの最適なタイミングと注意点
- 時期をずらして「こんなはずじゃなかった」を防ぐ4つの落とし穴と対策
- 真冬の七五三で家族全員が失敗しないための服装と完璧な防寒ガイド
本記事の内容
七五三、11月15日過ぎても大丈夫?専門家が解説
「七五三は11月15日」という伝統。この日付をずらすことに、なんとなく罪悪感や不安を感じてしまうかもしれません。まずは、その日付が持つ本当の意味と、現代における考え方について、私の経験も踏まえて詳しく見ていきましょう。このセクションを読むだけでも、「なんだ、大丈夫なんだ」と安心できると思います。

結論:11月15日にこだわる必要なし
七五三で最も大切なのは、「いつ祝うか」という日付よりも、「子供のこれまでの健やかな成長を家族で感謝し、これからの未来の健康と幸福を願う気持ち」そのものです。
もちろん、伝統には意味があります。なぜ11月15日と言われるようになったのでしょうか。
11月15日の由来とは?
これには諸説ありますが、最も有力とされているのが、江戸幕府にまつわる説です。
江戸幕府の三代将軍・徳川家光は、四男・徳松(のちの五代将軍・綱吉)が非常に体が弱かったことを深く案じていました。その徳松が5歳になった際、その盛大なお祝いを11月15日に行ったとされています。
では、なぜこの日だったのか。それは、当時の暦において11月15日が「鬼宿日(きしゅくじつ)」という、二十八宿(天体の位置に基づいた暦注)の中で「鬼が宿にこもっていて出歩かない日」=「何事をするにも妨げられない最良の吉日」であったためだと言われています。
この将軍家による盛大なお祝いが武家社会に広まり、やがて庶民にも定着していった、というのが通説です。

大切なのは「日付」より「精神」
この歴史が示している重要な事実は、11月15日という日付自体に何か神聖な意味があったわけではなく、「我が子の健康を願うために、その時代において最も縁起が良く、都合の良い日を選んだ」ということです。
この行動の原理は、現代の私たちが「混雑を避け、子供の体調が良い日」や「家族の仕事の都合がつく日」、「六曜の大安を選ぶ」ことと、その本質は何ら変わりないといいうことですね。
現代では共働きのご家庭も多いですし、お子様の体調、ご家族の都合を最優先して、あえて一年で最も混雑する11月(特に15日前後の土日)を避けるご家庭が年々増えている、という情報も多く見かけます。
慣れない着物で長時間待たされたり、混雑の中でイライラしながら形式的に行うよりも、家族みんなが心から笑顔でゆったりお祝いできる日を選ぶほうが、よほど伝統の「精神」を受け継いでいると言えるのではないでしょうか。
時期ずらし(前倒し)のメリット
とはいえ、「後倒し」には抵抗がある、秋のうちに済ませたい、という方もいらっしゃるでしょう。もちろん、11月より前の9月~10月に「前倒し」する選択肢もあります。それぞれの時期のメリットと注意点をまとめました。
9月のお参り(早めの前倒し)
メリット:
9月は、七五三シーズンとしてはまだ早く、神社も写真スタジオも比較的空いていることが多いです。予約が取りやすいのは大きな利点ですね。特に平日は狙い目です。
注意点:
最大の懸念は「気候」です。9月はまだまだ残暑が厳しい日が多く、着物での参拝は子供にとっても大人にとってもかなりの負担になります。熱中症対策やこまめな水分補給が欠かせません。また、ご存知の通り「台風」シーズンとも重なります。天候に左右されるリスクは10月や11月より高いと言えます。
10月のお参り(少し早めの前倒し)
メリット:
10月は気候が非常に安定し、暑すぎず寒すぎず、「お出かけ日和」が多いのが最大のメリットです。着物で過ごすにも快適な日が多いでしょう。運が良ければ、紅葉の始まりと共に美しい写真を残せる可能性もあります。
注意点:
気候が良いだけに、考えることは皆同じです。10月の土日、特に「大安」が重なると、11月の次に混雑する時期となります。また、お子様の「運動会」シーズンと重なるご家庭も多いのではないでしょうか。スケジュール調整が意外と難しいかもしれません。
写真スタジオの「前撮り」もこの時期に集中しがちです。人気の衣装や希望の日時を確保するには、結局、夏ごろからの早めの予約が必要みたいです。
12月にお参りする際の注意点
11月のピークが完全に過ぎ去った12月にお参りする「後倒し」。これは、個人的にとてもおすすめな選択肢だと感じています。私も下の子の時は12月上旬に検討しました。
最大のメリットは、なんといっても神社が空いていること。11月の喧騒が嘘のように、厳かな雰囲気の中、家族水入らずでゆったりとご祈祷を受けられる可能性が非常に高いです。待ち時間もほぼ無いかもしれません。
また、後述する「年齢」のところでも触れますが、12月や1月など冬生まれのお子様の場合、11月の時点ではまだ満年齢に達していないことがあります。お祝いを12月にずらすことで、誕生日を迎えて「満年齢」でのお祝いが可能になります。
ただし、12月ならではの注意点がいくつかあります。これを怠ると「こんなはずじゃなかった」になりかねません。

年末年始の準備期間は絶対に避ける
最大の注意点です。12月も中旬を過ぎ、下旬(具体的には20日以降)に差し掛かると、神社は「大祓(おおはらえ)」や「すす払い」、そして「初詣」の準備で非常に慌ただしくなります。
巨大な門松やしめ縄の設営、初詣客のための動線確保、お守りや破魔矢の準備などで、神職の方々も多忙を極めます。そのため、七五三のご祈祷を受け付けていない、あるいは非常に簡易的な対応になる可能性も考えられます。「お正月準備のため、12月20日をもって年内のご祈祷受付を終了します」とアナウンスしている神社も少なくありません。お参りは、遅くとも12月中旬までには済ませるのが賢明です。
年賀状の写真に間に合わないリスク
12月に撮影した七五三の晴れ着の写真を、新年のご挨拶(年賀状)に使いたい、と考える方は多いでしょう。私もそうでした。しかし、これも「第二のデッドライン」とも言うべき落とし穴です。
写真スタジオで撮影してから、データや写真が納品されるまでには、通常でも2~3週間、繁忙期だともっとかかる場合もあります。例えば12月第一週の土日に撮影したとしても、データ受け取りが12月20日過ぎになる可能性は十分あります。
年賀状の投函受け付けは12月15日から始まり、元旦に届けるためには一般的に25日までの投函が推奨されます。つまり、12月上旬に撮影しても、年賀状の入稿締切(あるいは自宅での印刷時間)に間に合わない可能性があるのです。年賀状に写真を使いたい場合は、お参りとは別に写真撮影だけ11月までに済ませる「前撮り」をするか、12月の本当に早い時期に撮影し、スタジオに納品スピードを厳密に確認する必要がありますね。
年明けのお参りはいつまで可能か
年が明けてから、1月にお参りするパターンです。これも可能ですが、12月とは異なる種類の、非常に重要な注意点が多い時期です。「初詣と一緒で合理的かも」と安易に考えると失敗する可能性があります。
「いつまで」より「いつから」が重要
まず、「いつまで可能か」という点ですが、大規模な神社(例えば明治神宮や熱田神宮など)では、七五三のご祈祷を年中受け付けている場合もあります。つまり「期限」は実質ないとも言えます。
問題は「いつから(行っても大丈夫か)」です。
三が日・松の内(お正月)は絶対に避ける
言うまでもありませんが、1月1日~3日(あるいは7日頃までの「松の内」)は、神社は完全に「初詣」専用の体制となっています。日本で最も参拝客で混雑する時期に、七五三のお祝いをするのは現実的ではありません。
参拝客でごった返すだけでなく、神社側もそもそも七五三のご祈祷を受け付けていない(初詣の一般祈祷のみ)神社がほとんどだそうです。お祝いムードも「お正月」一色となり、七五三の雰囲気ではありません。
年明けにお参りをするのであれば、初詣のピークが完全に過ぎ去った1月中旬(15日頃)以降が最も現実的です。この時期は神社が一年で最も空いている時期の一つであり、静かにお参りができます。

フォトスタジオの「成人式」競合
1月のお参りには、神社とは別の場所に強力な競合相手が存在します。それは「新成人」です。
1月の第2月曜日(成人の日)前後は、フォトスタジオにとって、成人式の前撮り・後撮り・当日撮影で一年で最も忙しい時期です。当然、スタッフの体制も成人式優先になります。
そのため、七五三(特に着物)の予約が非常に取りにくい、あるいは成人式優先の料金設定になっており割高になる可能性も考えられます。美容院の予約も同様です。1月に後撮りをする場合は、この「成人式シーズン」を避けて予約するのが賢明です。
1月は七五三の完全な「時期外れ」です。ご祈祷の可否は神社によって対応が分かれます。必ず事前に電話で確認し、予約をしておく必要があります。
時期ずらしと年齢(数え年・満年齢)
七五三の時期を考える上で、必ず出てくるのが「年齢」の問題です。「うちは数え年で祝うべき?満年齢で祝うべき?」と悩む方も多いでしょう。特に時期をずらすとなると、なおさら気になりますよね。
現代においてはどちらで祝っても全く問題ない、というのが一般的です。地域の風習やご家庭の考え方(例えば、上の子と合わせた、祖父母の意向など)、あるいは兄弟姉妹のタイミングと合わせて決めて良いものです。
「数え年」と「満年齢」の違い
まず、基本的な違いをおさらいしておきましょう。
| 年齢の数え方 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| 数え年 | 生まれた日(年)を「1歳」とし、 元日(1月1日)が来るたびに 1歳を加える。 | 昔ながらの数え方。 乳幼児死亡率が高かった時代、 無事に年を越したことを祝う意味合いが あったとされます。 |
| 満年齢 | 生まれた日を「0歳」とし、 誕生日が来るたびに 1歳を加える。 | 現代の公的な数え方。 日本の法律でも定められています。(出典:e-Gov 法令検索) |
例えば、2020年12月1日生まれのお子様の場合、
- 2023年11月15日時点では「満2歳11ヶ月」「数え年4歳」
- 2023年12月1日(誕生日)以降は「満3歳」「数え年4歳」
となり、かなり複雑です。
「後倒し」が積極的な解決策になるケース
そして、この年齢問題において、「お参りの時期をずらす」という選択は、デメリットどころか、むしろ「積極的な解決策」になります。
上記の例(2020年12月1日生まれ)のお子様を考えてみましょう。 伝統的な「2023年11月15日」の時点では、このお子様は「満2歳11ヶ月」です。満年齢では2歳、数え年では4歳となり、どちらも七五三の「3歳」から外れてしまいます(地域によっては数え4歳で祝うこともあります)。
この時期に無理にお祝いしても、2歳11ヶ月ではまだ体力的にも心配ですし、イヤイヤ期真っ只中で着物を着てくれない可能性も高いです。
しかし、お祝いをたった1ヶ月「後倒し」して「2023年12月」に行うとどうでしょう。お子様は誕生日を迎え、「満3歳」になります。 このように、11月15日に無理に合わせるよりも、あえて時期をずらして満年齢の誕生日を待つ方が、年齢的にも体力的にも(2歳11ヶ月より満3歳の方がしっかりしている)、理にかなったお祝いができるのです。
この場合、「後倒し」は「伝統から遅れた」のではなく、「我が子の成長に合わせた、満年齢に合わせるための積極的なスケジュール調整」となります。特に早生まれ・冬生まれのお子様にとっては、非常に合理的な判断だと私は思います。
「七五三は11月15日を過ぎても大丈夫」の落とし穴
「11月15日を過ぎても大丈夫」と決めた後、準備不足で当日を迎えて「こんなはずじゃなかった…」と後悔するのだけは避けたいですよね。時期をずらすという賢明な判断は、「知らなかった」ばかりに起こるいくつかの「落とし穴」によって台無しになってしまうことがあります。ここでは、時期をずらす際に必ず確認すべき4つの重要事項と、その完璧な対策をまとめました。

ご祈祷の事前確認は必須
時期をずらす場合、これが最も重要かもしれません。ひと昔前は、七五三のご祈祷は秋のシーズン(9月~12月)に限定されているのが一般的でした。
現代では年中受け付ける神社が増えたようですが、今でも神社によっては、七五三の特別なご祈祷や授与品(お守りや記念品)の準備を、限られた期間のみとしている場合があります。特に1月の三が日は前述の通り、初詣の祈祷のみで七五三は受け付けていないことがほとんどです。
最近は神社のウェブサイトからご祈祷の予約ができるところも増えましたが、時期をずらす場合は特に、安易にWeb予約で済ませず、一度電話で確認することを強くお勧めします。
電話確認の「聞き方」のポイント(完璧な確認スクリプト例)
対策は「必ず事前に電話で確認すること」です。この時、単に「ご祈祷は可能ですか?」と聞くだけでなく、以下の3点をセットで確認するのがおすすめです。
確認スクリプト例:
「お世話になります。X月X日(の午前中)に、息子の5歳の七五三のご祈祷をお願いしたいと考えております。
- その日時は、七五三専用のご祈祷として受け付けていらっしゃいますでしょうか?
- ご祈祷料(初穂料)はおいくらでしょうか?(また、のし袋の表書きは「初穂料」でよろしいでしょうか?)
- ご祈祷後にいただく授与品(お守りやメダル、千歳飴など)は、七五三専用のものになりますでしょうか?

なぜこれらを聞くのか?
1. ご祈祷の「種類」について:
時期外れの場合、「七五三祈祷」という枠ではなく、「家内安全」などの一般祈祷の枠で受け付ける、という神社もあるかもしれません。それでもご利益は変わりませんが、祝詞(のりと)の内容などが異なる場合があります。しっかり「七五三」として祝ってもらえるかを確認します。
2. 初穂料について:
金額の確認(「お気持ちで」と言われる場合もありますが、相場は5,000円~10,000円程度が多いようです)と同時に、のし袋の書き方なども確認しておくと当日スムーズです。
3. 授与品について:
これが子供にとっては一番重要かもしれません。時期外れの場合、「ご祈祷は可能だが、七五三専用の記念品や千歳飴は11月で終了してしまったため、一般的なお守りになる」というケースも十分考えられます。子供のがっかりした顔を見ないためにも、事前に確認しておきましょう。
※あくまで一般的な確認事項です。神社のルールやご祈祷の詳細は、必ず参拝予定の神社に直接お問い合わせください。
千歳飴が手に入らない問題と対策
七五三の象徴である「千歳飴」。これが意外な落とし穴です。あのおめでたい紅白の長い飴には、「粘り強く、細く長く(長寿)」生きられるように、という親の願いが込められています。
しかし、この千歳飴は完全な季節商品です。
神社でご祈祷の授与品として用意される千歳飴も、11月15日を過ぎると在庫がなくなり次第、配布終了となります。スーパーマーケットや和菓子店での店頭販売も、多くは10月中旬から11月中旬頃までで、12月になると入手は困難になります。
上記「ご祈祷の確認」で、神社に在庫がないことが判明したらどうするか。対策は2つあります。

最強の対策:ネット通販での事前購入
これが最も確実かつおすすめな方法です。現在、千歳飴はインターネット通販で一年中購入することが可能です。私もリサーチして驚きましたが、多様な商品があります。
これは「神社で貰えないかもしれない」というリスクをゼロにするだけでなく、
- 子供が好きなキャラクターの袋
- 写真映えするデザイン性の高いおしゃれな袋
- 有名な和菓子屋さんの、味にこだわった千歳飴
- (アレルギーをお持ちのお子様向けに)原材料をしっかり確認した飴
など、親が自由に選べるという大きなメリットに変わります。
「千歳飴は神社で貰うもの」という固定観念を捨て、事前に最高の笑顔を引き出すアイテムとして準備しておくことが、時期をずらす際の成功の鍵だと私は思いました。なお、自分で準備した千歳飴をご祈祷の際に神前にお供えできるかどうかも、念のため神社に確認しておくとより丁寧ですね。
写真(後撮り)プランの罠
11月のピークを過ぎた12月以降の「後撮り(あとどり)」には、魅力的なメリットがたくさんあります。
- 撮影料金が「後撮りキャンペーン」などで割引になる。
- スタジオが空いていて予約が取りやすい。
- 11月のピーク時にはレンタル中で借りられなかった人気の新作衣装を選べる可能性がある。
しかし、ここには大きな「罠」が潜んでいることがあるようです。それは、スタジオが提供する「お得な後撮りパック」の多くが、「スタジオ内での写真撮影のみ」を対象としているケースが多いことです。
「お参り当日レンタル」が対象外・別料金のケースに注意
「後撮りパック50%オフ」という広告だけを見て契約し、後日「お参りにもその着物で行きたい」と申し出たところ、高額な「お出かけレンタル料」を別途請求されて驚く、というパターンは非常によく見られます。
お得な後撮りパックが、衣装を借りて神社にお参りに行く「お参り当日レンタル」が、割引の対象外であるか、そもそもプランに含まれていない、あるいはシーズンオフで「レンタル不可」となっているケースも多いのです。

スタジオ選びで確認すべきこと
スタジオを予約する際は、「後撮りパック」という言葉だけで判断せず、必ず以下の2点を明確に分けて質問・確認してください。
- 「スタジオでの撮影料金(衣装・着付け・ヘアメイク・写真データ代など全て含む)はいくらですか?」
- 「その衣装(またはお参り用の別の衣装)を、X月X日のお参り当日に外に持ち出してレンタルすることは可能ですか? その場合の追加料金(お出かけレンタル料)はいくらですか?」
この2つの総額で判断することが、後撮りの罠を回避する唯一の方法です。また、
- 「お出かけレンタル」の場合、スタジオの着付けとは別に、神社近くの美容院で再度着付けが必要か?
- スタジオ内で撮影する衣装と、お出かけでレンタルできる衣装は別(ランクが下がる)になっていないか?
なども確認しておくと万全です。
※料金体系やプラン内容は、フォトスタジオによって本当に様々です。必ずご自身の目で契約内容を詳細に確認してください。
真冬の服装と防寒対策(子供・親)
12月や1月にお参りする際の最大の懸念事項は、やはり「寒さ」です。七五三の服装、特に和装は構造的に隙間が多く、冬の屋外では想像以上に寒いため、徹底した防寒対策が必須です。ここで手を抜くと、寒さで子供の機嫌が悪くなり、写真も笑顔ゼロ…という最悪の事態になりかねません。
子供の和装(着物・被布・袴)の防寒
<最重要:見えない防寒(インナー)>
和装専用の肌襦袢(はだじゅばん)だけでは、真冬の寒さは絶対に防げません。ヒートテックに代表される、長袖の機能性インナー(保温下着)の着用を強く推奨します。
最重要ポイントは、必ず「襟ぐりが大きく開いたもの」を選ぶこと。具体的には、Uネック、Vネック、あるいは前後が広く開いたバレエネックタイプ(オフショルダータイプ)が最適です。通常の丸首(クルーネック)では、着物の襟元(前)や、首の後ろ(衣紋)からインナーが確実に見えてしまい、非常に不格好になります。
<中間着>
薄手のフリースベストや、前開きのカーディガン(ボタンがゴロゴロしないもの)を着物とインナーの間に着こむのも手です。ただし、着膨れしすぎると苦しくなるので、あくまで薄手のものを選びます。
<見える防寒:アウター・足元>
3歳(被布)の場合:
「被布(ひふ)」はベストのようなもので、それ自体にある程度の防寒性があります。しかし真冬はそれだけでは不十分です。被布の上から羽織れる「ケープ」や「ポンチョ」が最適です。これらは洋服用のもので構いません。
5歳(袴)・7歳(帯)の場合:
和装の「羽織(はおり)」を着ることが多いですが、それでも寒い場合は同様にケープや大判のショールを使います。特に7歳の女の子は帯結びが豪華なので、それを潰さないポンチョ型が便利です。
足元(最強の対策):
伝統的な「足袋(たび)」と「草履(ぞうり)」は、足先が非常に冷えます。対策としては、保温性の高いストレッチ素材やフリース裏地の「足袋ソックス」に変える方法があります。
しかし、私がリサーチした中で最も現実的だと感じたのは、「ハイブリッド運用」です。
神社への往復や、境内を長時間歩く間は、履き慣れた「ブーツ」や「スニーカー」を履かせます(袴スタイルの男の子ならブーツはむしろ格好良いです)。そして、ご祈祷の直前や写真撮影のタイミングだけ、草履に履き替える、という方法です。これが子供の負担を最小限に抑える最も現実的な方法だと感じました。
小物:
「貼らないタイプ」のカイロを、背中や懐(ふところ)の、肌に直接触れない場所(インナーや着物の上)に忍ばせます。貼るタイプは低温やけどの恐れがあるため、子供には避けるのが無難です。
親(両親)の服装と防寒
子供が主役とはいえ、寒い中で長時間外にいる親の防寒も重要です。親が寒さで震えていては、お祝いどころではありません。
<母親(洋装:スーツ・ワンピース)>
ネイビー、グレー、ベージュなどの落ち着いた色のセレモニースーツやワンピースが基本です。冬ですので、ツイード素材なども季節感があって素敵ですね。肌の露出は控えます。パンツスーツも動きやすく防寒性が高いのでおすすめです。
コートは、カジュアルすぎるダウンジャケットやラフなデザインのものは避け、フォーマルな場にふさわしいウール素材の「チェスターコート」「ノーカラーコート」など、シックな色のコートを選びます。
足元は、寒くても生足や黒タイツは避け、肌色に近いストッキングが基本ですが、寒さが厳しい場合は「防寒用の厚手(60デニール程度)のベージュストッキング」も検討しましょう。
<母親(和装:訪問着・色無地)>
子供が主役ですので、子供の衣装よりも格を控えた訪問着(ほうもんぎ)、付け下げ、色無地(いろむじ)などが適しています。 防寒は、和装用の「羽織」や「道行(みちゆき)コート」を着用します。さらに、防寒用の「大判ショール(ストール)」は必須です。カシミアやウール、上質なフェイクファーなど、品の良い素材を選びましょう。インナーはもちろん機能性インナー(襟ぐりが広いもの)です。
<父親(スーツ)>
服装はダークスーツ(ネイビー、チャコールグレーなど)が基本です。シャツは白、ネクタイは派手すぎないお祝いの色(シルバー、淡いブルーやエンジなど)が良いでしょう。
コートは、ビジネス用の「チェスターコート」や「ステンカラーコート」、「トレンチコート」など、スーツに合うフォーマルなコートを着用します。もちろん、下には機能性インナーを忘れずに。
最重要:アウターを脱いだ時の「見えない防寒」
親子ともに、コートやショール、羽織といった「防寒着」は、神社でのご祈祷の際には脱いで畳み、膝の上や脇に置くのがマナーです。また、記念撮影の際も外すことがほとんどです。
つまり、儀式や撮影の最中は、「コートを脱いだ状態」で、暖房が効いていない(あるいは効きが弱い)神社の本殿やスタジオで過ごすことになります。
したがって、「見えない防寒」(インナーやカイロ)が最も重要です。母親も父親も、スーツや和装の下にヒートテックなどの保温インナーを必ず着用し、カイロを忍ばせておく(※低温やけどには十分注意してください)など、アウターに頼らない防寒対策を徹底することが、寒い時期のお参りを成功させる鍵となります。
六曜(仏滅など)は気にする?
時期をずらすと決めた後、次に悩むのが「日柄」、つまり「六曜(ろくよう)」です。「大安でないとダメだろうか」「仏滅は避けるべきか」という疑問にお答えします。
まず、私のリサーチでは、六曜(大安、仏滅、友引、先勝、先負、赤口)は、もともと中国から伝わった民間の占いの思想であり、日本の伝統的な神道(神社)とは一切関係ありません。
神社の神主さんにお聞きしても、「神社のお参りに六曜は関係ありません」と断言されることが多いようです。したがって、神道の行事である七五三を仏滅に行ったとしても、神様のご利益(ごりやく)が減ったり、縁起が悪くなったりすることは一切ないそうです。
むしろ、合理的に考えれば、「仏滅」や「赤口」は結婚式などのお祝い事を避ける人が多いため、神社が空いている可能性が高く、お参りには最適である、という考え方すらあります。
それでも気になる場合(祖父母が気にする場合)の対処法
そうは言っても、ご両親や祖父母世代の中には、日柄を強く気にする方がいるのも事実です。あるいは、11月15日という伝統をすでにずらしているのだから、「せめて日柄だけでも良い日にしたい」と考える親心もあるでしょう。
六曜は、ルールとして縛られるものではなく、家族の心の平穏を得るための「ツール」として賢く利用するのが正解です。
もし仏滅や赤口にしか予定が合わなくても、落ち込む必要はありません。六曜は、時間帯によって吉凶が変わるルールがあります。このルールを使えば、ほぼどの日でも「吉の時間帯」を見つけることができます。
| 六曜 (Rokuyou) | 意味 (Meaning) | 七五三のお参り吉凶 (Auspiciousness) | おすすめの時間帯 (Recommended Time) |
|---|---|---|---|
| 大安 (Taian) | 「大いに安し」 | ◎ (Excellent) | 1日中、吉。 時間を気にする必要なし。 |
| 友引 (Tomobiki) | 「友を引き込む」 | ○ (Good) | 朝・夕は吉。 昼(11時~13時)のみ凶。 |
| 先勝 (Sensho) | 「先んずれば即ち勝つ」 | △ (Okay) | 午前中が吉。 午後は凶。 (午前中のお参りが吉) |
| 先負 (Senbu) | 「先んずれば即ち負ける」 | △ (Okay) | 午前中は凶。 午後が吉。 (午後のお参りが吉) |
| 赤口 (Shakku) | 凶日 | × (Bad) | 1日中、凶。 ただし昼 (11時~13時)のみ吉。 |
| 仏滅 (Butsumetsu) | 「物事が滅する」 | × (Bad) | 1日中、凶。 六曜を気にするなら 避けるのが無難。 |
この表の通り、例えば「赤口」の日にしか予定が合わなくても、ご祈祷の時間を午前11時から午後1時の間に設定すれば、六曜上も「吉」の時間にお参りしたことになります。「先負」なら午後に、「先勝」なら午前中にお参りすれば良いのです。
祖父母に説明する際も、「仏滅だけど、神道とは関係ないらしいよ」と突き放すのではなく、「赤口だけど、一番良いお昼の時間にお参りするように予約したよ」と伝えてあげると、安心してもらえるかもしれませんね。
七五三は11月15日を過ぎても大丈夫、大切なのは笑顔【まとめ】
「七五三は11月15日過ぎても大丈夫?」という疑問について、まとめてきました。
最終的な結論としては、やはり「七五三は11月15日を過ぎても大丈夫、全く問題ない」ということです。
日付や伝統的な形式にこだわるあまり、家族が疲れ切り、子供がぐずり、親が焦ったりイライラしてしまうようなお祝いになっては、それこそ本末転倒です。
それよりも、家族の都合と子供の体調を最優先し、みんなが心から笑顔で「おめでとう」「ありがとう」と言い合える日を選ぶこと。それこそが、徳川家光が我が子の健康を願った「精神」を受け継ぐ、七五三という行事の本来の目的に一番近いのではないでようか。
千歳飴がネットで買え、防寒対策が万全にでき、年齢の考え方にも柔軟性が持てる現代において、時期をずらすことのデメリットは、しっかり準備さえすればほぼありません。どうぞ、自信を持って、ご家族にとっての「最良の日」を選んであげてくださいね。