秋が深まり、七五三のシーズンが近づくと、多くのご家庭で「11月15日の七五三は祝日ですか?」という、切実な疑問が浮かんでくるようです。私自身も日本の行事に興味を持ち、毎年この時期のカレンダーを眺めていますが、この疑問には多くの方が混乱してしまう、はっきりとした理由が存在します。
その最大の原因は、Googleカレンダーをはじめとするスマートフォンのスケジュール帳に「七五三 祝日」といった表示がされることにあるようです。一方で、会社や学校から配られる年間の休日カレンダーを見ると、11月15日が平日扱いになっている。
「一体、どちらが正しいの?」と混乱し、お子様のお祝いのための休暇申請や、ご家族のスケジュール調整をどうすれば良いか迷って、検索されているのではないでしょうか。
この記事では、まず「11月15日は祝日か?」という核心的な問いに法律的な根拠から明確にお答えします。その上で、お参りに最適な時期、さらには当日に慌てないための初穂料の準備や、のし袋の書き方、失敗しない親の服装マナーまで、皆様が知りたい情報を網羅的に、そして深く掘り下げて解説していきます。
- 11月15日が祝日ではない明確な理由
- 七五三の年齢(満年齢・数え年)の選び方
- 男の子と女の子の祝う年齢の違い
- 当日の準備(初穂料・服装)とマナー
本記事の内容
「11月15日の七五三は祝日ですか」の疑問に回答
まずはじめに、七五三に関する最も基本的かつ重要な疑問、「11月15日は祝日なのか?」という点について、結論からしっかりとお答えします。なぜ祝日ではないのか、ではなぜ祝日と勘違いされやすいのか、そして11月15日という日付が持つ歴史的な背景についても、詳しく見ていきましょう。

祝日ではない理由
結論から先に申し上げますと、11月15日は、法律で定められた「国民の祝日」ではありません。
日本において「祝日(=休日)」となる日は、「国民の祝日に関する法律」(昭和23年法律第178号)によって厳密に定められています。この法律は、"美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日"を「国民の祝日」と定め、休日とすることを規定しています。
11月の「国民の祝日」は2日だけ
この法律に基づき、内閣府が公表している「国民の祝日」一覧を確認しますと、11月に定められている祝日は以下の2日のみです。(出典:内閣府『国民の祝日について』)
- 11月3日:
文化の日(自由と平和を愛し、文化をすすめる日) - 11月23日:
勤労感謝の日(勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう日)
ご覧の通り、リストの中に「11月15日」は含まれていません。
「年中行事」と「国民の祝日」の決定的な違い
ここで重要になるのが、「年中行事」と「国民の祝日」の違いです。
- 国民の祝日:
法律に基づき定められた日。官公庁や公立学校、多くの企業が「休日」となります。 - 年中行事:
節分、ひな祭り、端午の節句、お盆、そして七五三など、古くから日本の文化や風習として受け継がれてきた日。
これらは文化的に非常に重要ですが、法律上の「休日」ではありません。
七五三は、後者の「年中行事」にあたるため、11月15日が祝日(休日)扱いにはならないのです。
平日だった場合の具体的な影響
この事実は、七五三のスケジュールを組む上で非常に重要です。例えば、2023年の11月15日は水曜日でしたが、法律上は通常の「平日」でした。2024年の11月15日は金曜日ですが、これも「平日」です(土日が休みの場合、翌日から連休にはなりますが)。
つまり、11月15日当日にお子様のお祝いをしようとすると、ご両親は会社に休暇(有給休暇など)を申請する必要があり、お子様も学校や幼稚園・保育園は通常通りということになります(園によっては七五三の行事を行う場合もあります)。
この「伝統の日=平日」という現実が、多くの方が「では、いつお祝いすればいいのか?」と悩み、お参りの時期が11月の週末に集中する(H3-6で後述)直接的な原因となっています。
カレンダーで祝日と表示される謎
「法律では祝日ではないことは分かった。でも、現に私のスマホのカレンダーには『祝日』と表示されている」という方も多くいらっしゃると思います。それこそが、この問題の根源であり、最大の混乱のタネです。
この現象にはデジタルカレンダー特有の「仕様」が関係していると推測しています。

なぜカレンダーは「祝日」と表示するのか?
Googleカレンダーをはじめとする多くのデジタルカレンダーは、グローバル(全世界)仕様がベースになっています。そのため、日本のユーザー向けに複数のカレンダーデータを「追加」する形でローカライズされています。
多くの場合、以下の2つのカレンダーがデフォルトで追加されています。
- 日本の祝日カレンダー:
「国民の祝日に関する法律」に基づく、法的な休日を表示するデータ。 - 日本の行事カレンダー(またはそれに類するもの):
節分、七五三、お盆など、休日ではない「年中行事」を表示するデータ。
問題は、この2つのデータがカレンダー上で区別しにくく表示されることにあるようです。特に「七五三」は、海外のプラットフォーム側が「Shichi-Go-San Festival(七五三祭り)」のように認識し、それを日本語に(あるいは機械的に)表示する際に「七五三の祝日」や「七五三 祝日」といった、法的な休日であるかのような誤解を招く表現で表示してしまうケースが多発しているのです。
つまり、カレンダーの表示は「今日は七五三という行事の日ですよ」とお知らせしてくれているものが、あたかも「休日(祝日)ですよ」と宣言しているかのように見えてしまっている、というのが実情だと考えられます。
カレンダーの「祝日」表示を鵜呑みにしないでください
このカレンダーの表示は、あくまで「行事の案内」であり、法律上の「休日」を意味するものではありません。
この表示を信じて「11月15日は祝日だから会社も休みだろう」と判断してしまうと、大変なトラブルになりかねません。スケジュールを組む際は、必ずご自身の会社や学校が定める公式の年間休日カレンダーを確認するようにしてください。
他のアプリへの連携による混乱の拡大
この問題は、Googleカレンダー単体にとどまりません。Googleカレンダーの予定を、他のスケジュール管理アプリ(TodoistやTickTick、Outlookなど)と連携・同期させている場合、その「七五三 祝日」という誤解を招くデータが、他のアプリにも自動的にインポートされてしまいます。
こうして、使うツールの数だけ「11月15日=祝日」という誤った情報が拡散・定着してしまい、多くの人が「祝日だと思っていたのに違った」と混乱する事態を招いているのです。
なぜ11月15日?由来を解説
では、祝日ではないにもかかわらず、なぜ11月15日という特定の日付が、カレンダーに載るほど重要な日として認識されているのでしょうか。そのルーツは、江戸時代にさかのぼります。
由来その1:徳川綱吉の「袴着の儀」
最も有力とされている説が、江戸時代の徳川将軍家に関わるものです。
徳川三代将軍・家光の息子であった徳松(とくまつ)、後の五代将軍・徳川綱吉は、幼少期とても体が弱かったとされています。そこで家光は、徳松が5歳になった年(慶安3年、1650年説あり)の11月15日に、その健やかな成長を祈願して「袴着(はかまぎ)」の儀式を盛大に行いました。
その後、徳松(綱吉)が立派に成長し、ついには将軍の座にまで就いたことから、この11月15日という日付の縁起の良さにあやかり、武家社会から裕福な商人、そしてやがては庶民の間にも「七五三のお祝いは11月15日に行うもの」という風習が広まっていったとされています。
由来その2:最良の吉日「鬼宿日」
では、なぜ将軍家は数ある日の中から「11月15日」を選んだのでしょうか。それには、当時の暦(こよみ)が深く関係しています。
一説によれば、この11月15日が、古代中国から伝わった「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」という星座に基づく暦注(占いのひとつ)において、「鬼宿日(きしゅくび)」にあたっていたためとされます。
「鬼」という字が入っているため不吉に思われがちですが、意味は逆です。「鬼宿日」とは、「鬼が自らの宿(家)にこもっていて、外を出歩かない日」とされ、鬼に邪魔をされることのない、何事を行うにも最良の吉日と考えられていました。病弱な徳松の将来を占う重要な儀式に、これ以上ないほどふさわしい日だったのです。
由来その3:収穫祭(新嘗祭)との関連
もう一つの説として、日本の古くからの農耕儀礼との関連も指摘されています。
旧暦の11月は、その年に収穫された穀物を神様に捧げ、実りに感謝する「収穫祭」の月でした(現在の「勤労感謝の日」のルーツである新嘗祭(にいなめさい)も旧暦11月に行われていました)。
そして、旧暦の15日は「満月」の日にあたります。この収穫月の満月の日(11月15日)に、氏神様(地域の神様)への収穫の感謝と、子供が無事に育ったことへの感謝をあわせて行っていた風習が、七五三の原型になったという説です。
「七五三」は3つの儀式がまとまったもの
現代では「七五三」とひとくくりにされていますが、もともとは宮家や公家、武家社会で行われていた、年齢ごとの3つの異なる通過儀礼が、時代を経て一つにまとまったものです。
3歳:「髪置(かみおき)」
平安時代、衛生上の観点や、乳幼児の生存率が低かったことから「髪は不浄なもの」とされ、男女ともに3歳頃までは髪を剃り、坊主頭で育てる習慣がありました。「髪置」は、3歳の春頃から髪を伸ばし始める際に行われた儀式で、「もう幼児ではない」という最初の節目でした。
5歳:「袴着(はかまぎ)」または「着袴(ちゃっこ)」
主に男の子が、それまでの幼児用の衣服(紐付きの着物)を改め、初めて男子の公的な衣服である「袴(はかま)」を身につける儀式です。これにより、幼児から少年へと社会的に認められる、非常に重要な節目でした。徳川綱吉が行ったのも、この儀式です。
7歳:「帯解(おびとき)」または「紐落とし(ひもおとし)」
主に女の子が、それまで着物を留めていた付け紐(つけひも)をとり、初めて大人と同じ幅の本格的な「帯」を締める儀式です。これにより、幼児から少女へと成長したことを示し、社会の一員として認められるようになりました。

「七つまでは神のうち」という言葉の重み
現代の日本では考えられませんが、医療が発達していなかった時代、乳幼児の死亡率は非常に高く、「7歳まで無事に生き延びる」ことは奇跡に近いことでした。そのため、「七つまでは神のうち(いつ神様の元へ召されてもおかしくない、まだ現世の人間として定まっていない存在)」という言葉が生まれました。
七五三の儀式は、これらの節目を無事に越え、神様の世界から「人間(社会の一員)」として認められるための、非常に切実で重要なお祝いだったのです。11月15日という日付は、そうした親の祈りが込められた、文化的に非常に重い意味を持つ日と言えます。
「11月15日の七五三は祝日ですか」の疑問と準備
さて、ここまでで「11月15日は祝日ではない」こと、「年齢の数え方は柔軟である」ことがお分かりいただけたかと思います。その現実を踏まえた上で、次に「では、具体的にいつ、どのように準備を進めればいいのか?」という、実践的なスケジューリングと準備の解説に移ります。

お参りはいつやるのが最適?
「11月15日は祝日ではない(=平日である可能性が高い)」という事実は、お参りの日程決めに直結します。ご両親が共働きの場合、11月15日当日のためにお休みを取るのは難しいケースも多いでしょう。
11月週末の「大混雑」という現実
その結果、どうなるか。当然ながら、お参り客は「11月15日に最も近い土日・祝日」に極端に集中します。特に11月は気候も良く、紅葉シーズンでもあるため、人気の高い有名な神社(例えば、明治神宮や地域の大きな八幡宮など)は、この時期の週末、大変な混雑に見舞われます。

ピーク時の混雑で起こりうること
- 神社の大駐車場が満車になり、遠くのコインパーキングを探し回る。
- ご祈祷の受付だけで30分~1時間待ちの長蛇の列。
- ご祈祷が一回に数十組(50組以上も)の合同となり、神殿がぎゅうぎゅう詰めで、自分の子供がどこにいるかも分からない。
- 境内が参拝客で溢れ、晴れ着での写真撮影も背景に人が写り込み、順番待ちになる。
- 慣れない草履や着物で長時間待たされたお子様が、疲れて機嫌を損ねてしまう。
こうした混雑による疲弊を避けるため、現代ではお参りの時期をあえてずらす「分散化」が主流になっています。
混雑回避の選択肢:「分散化」
賢明なご家庭が選んでいる、混雑回避の主な選択肢は以下の3つです。
選択肢1:早めの参拝(9月・10月)
11月のピークを避け、9月や10月の週末にお参りを済ませるパターンです。特に10月は「神無月」と呼ばれますが、七五三のお参りには全く問題ありません(むしろ11月の次に人気です)。
- メリット:
ピーク時ほどの混雑はなく、気候も安定している日が多い。
紅葉が始まる地域もあり、写真映えも期待できます。 - デメリット:
9月はまだ残暑が厳しく、台風シーズンでもあります。
日によっては暑さ対策(飲み物、保冷剤、着物の下着を涼しい素材にするなど)が必要です。
選択肢2:遅めの参拝(12月・1月)
ピークが完全に過ぎ去った12月や、年明けの1月にお参りするパターンです。
- メリット:
神社は閑散期に入り、非常に空いています。
ご祈祷もゆっくりと、場合によってはご家族一組だけで丁寧に行ってもらえる可能性も高くなります。 - デメリット:
寒さが厳しくなります。
特に小さなお子様には、着物の上から羽織るもの、カイロ、ヒートテックのような機能性インナーなど、徹底した防寒対策が必須です。紅葉は終わっています。
【最重要】シーズンオフのご祈祷は「事前確認」が必須!
11月は多くの神社が「七五三祈祷 受付」の窓口を設けていますが、9月や12月以降のシーズンオフは、ご祈祷の受付期間を限定していたり、予約制に切り替えていたりする場合があります。
「せっかく行ったのにご祈祷してもらえなかった」という事態を避けるため、シーズンを外してお参りする場合は、必ず事前に神社の公式サイトを確認するか、直接電話で「〇月〇日に七五三のご祈祷は可能ですか?」と確認しておきましょう。これは非常に大切なマナーでもあります。
選択肢3:「前撮り・後撮り」による撮影と参拝の「分離」
私が個人的に最も合理的で、お子様の負担が少ないと思うのが、この「分離」プランです。
これは、写真スタジオや出張カメラマンによる「記念撮影」の日と、神社へ「お参り(ご祈祷)」に行く日を、まったく別の日に分けてしまう方法です。
- 記念撮影(前撮り・後撮り):
春や夏、あるいはお参り後の閑散期に、写真スタジオでゆっくりと時間をかけて撮影します。
スタジオなら天候に左右されず、お子様の機嫌の良い時間帯を選べます。衣装も複数着られるプランが多いです。 - お参り当日:
撮影というプレッシャーがないため、ご祈祷と家族での会食に集中できます。
当日は、動きやすい服装(例えば、上品なワンピースやスーツ)で神社に行き、ご祈祷だけを受ける「お参りだけプラン」も可能です。
もちろん、撮影とは別の着物をレンタルしてお参りすることもできます。
「着物を着て、撮影して、神社に移動して、ご祈祷を受けて、食事会」という全行程を1日で行うのは、大人でも大変です。お子様の体力を考えれば、この「分離」プランは非常に賢明な選択だと私は思います。
男の子と女の子の祝う年齢の違い
七五三の準備を進める中で、年齢の数え方とともによく疑問に上がるのが、「男の子と女の子で、祝う年齢が違うのか?」という点です。
伝統的な祝う年齢とその背景
前述の「3つの儀式(髪置・袴着・帯解)」の由来に基づき、伝統的な区分では以下のようにお祝いされてきました。
- 男の子:5歳 (「袴着の儀」に由来)
- 女の子:3歳 と 7歳 (「髪置の儀」と「帯解の儀」に由来)
これが、七五三は「男の子は1回(5歳)、女の子は2回(3歳・7歳)」と言われる理由です。
地域による違いと現代の傾向
ただし、これも地域によって差がありました。例えば関西地方などでは、男の子も3歳で「髪置」のお祝いをし、5歳で「袴着」のお祝いをする(つまり3歳・5歳で祝う)風習が元々あった地域もあります。
そして現代では、こうした伝統や地域差の垣根はますます低くなっています。 特に顕著なのが、3歳のお祝いを、性別に関わらず男の子・女の子ともに行うご家庭が非常に増えていることです。
これは、「3歳の、幼児特有のあどけない可愛らしさを、ぜひ晴れ着の記念写真として残したい」というご両親の想いや、写真スタジオが「3歳男女」のプランを豊富に用意していることなどが背景にあるようです。
年齢別・性別の衣装スタイル
こうした現代の傾向に合わせて、衣装にも多様性が生まれています。
- 3歳(男女):被布(ひふ)
ベストのような形の上着を、着物の上から羽織るスタイルです。
本格的な帯を締めないため、着付けが簡単で、小さなお子様が動いても着崩れしにくく、何より楽です。
この「被布」スタイルは、3歳の女の子だけでなく、3歳の男の子の衣装としても大変人気があります。 - 5歳(男の子):羽織袴(はおりはかま)
「袴着の儀」に由来する、最も伝統的で凛々しいスタイルです。
3歳の被布姿とはまた違った、少年らしい成長した姿を見ることができます。 - 7歳(女の子):四つ身(よつみ)と帯
「帯解の儀」に由来し、付け紐の着物を卒業し、大人と同じような幅の帯(袋帯など)を締めるスタイルです。
3歳の被布姿とは比べ物にならないほど、大人びた華やかな装いとなります。

初穂料とのし袋の書き方
お参りの日程や衣装が決まったら、次に準備すべきは実務的な「お金」と「マナー」です。神社でご祈祷を受ける際に、謝礼としてお納めする「初穂料(はつほりょう)」について、相場や正しい準備の仕方を解説します。
「初穂料(はつほりょう)」とは?
「初穂料」とは、神社でのご祈祷や祭祀に対する謝礼として納めるお金の表書き(名目)です。「初穂」とは、その年に初めて収穫された稲穂(お米)のことを指し、古来、神様への感謝のしるしとして、その年の「初物(はつもの)」をお供えしていた風習に由来しています。
現代では、そのお米や野菜の代わりとして、現金を納めるようになり、その名目として「初穂料」という言葉が使われています。七五三のほか、お宮参りや安産祈願、地鎮祭など、様々なお祝い事のご祈祷で使われる、最も一般的な表書きです。(似た言葉に「玉串料(たまぐしりょう)」がありますが、七五三では初穂料がより一般的です)。
初穂料の相場は?
初穂料の金額は、神社によって様々です。 一般的な相場としては、お子様1人につき、5,000円から10,000円とされています。
金額のパターンは、神社によって大きく分けて以下の3パターンがあります。
- 金額が明確に決められている(一律)
例:「七五三祈祷料 一律 10,000円」
公式サイトや境内の案内に明記されています。この場合は、指定された金額を準備します。 - 金額が段階的に決められている(松竹梅)
例:「5,000円」「7,000円」「10,000円」
金額によって、ご祈祷後の授与品(お守り、千歳飴、記念のおもちゃや文房具セットなど)の内容が変わる場合があります。 - 「お気持ちで」または「5,000円より」
金額が参拝者に委ねられているパターンです。
この場合、迷ったら5,000円、7,000円、10,000円のいずれかのキリの良い数字(4, 6, 8などの割り切れる数字や、9=苦を連想する数字は避けるのが無難)を包むのが一般的です。
兄弟姉妹で受ける場合
ご兄弟姉妹がそろってご祈祷を受ける場合は、「人数分の初穂料」を用意するのが基本です。例えば、初穂料が一律5,000円の神社で2人受けるなら、合計10,000円を包みます。
ただし、神社によっては「お二人目からは割引(例:2人で8,000円)」といった独自の規定を設けている場合もあります。
【最重要】初穂料は「必ず事前に確認」を!
当日、受付で「いくらですか?」と聞くのは、スマートではありません。「せっかくのお祝いなのに、金額を間違えて恥をかいた」ということがないよう、必ず事前にその神社の公式サイトで確認するか、直接電話で問い合わせておくことを強く推奨します。
電話で聞く際は、「今度、七五三のご祈祷をお願いしたいのですが、初穂料はおいくらお包みすればよろしいでしょうか?」と尋ねれば、丁寧に教えていただけます。
のし袋(祝儀袋)の準備とマナー
初穂料は、現金をそのまま財布から出して渡すのはマナー違反です。必ず「のし袋(祝儀袋)」に入れて準備します。
(1) のし袋の選び方
コンビニや文房具店で売っています。選ぶポイントは「水引(みずひき)」です。
- OK:
紅白の「蝶結び(花結び)」 蝶結びは、結び目が簡単にほどけ、何度でも結び直せることから、「何度あっても良いお祝い事」(出産、進学、そして七五三など)に使われます。 - NG:
「結び切り」や「あわじ結び」 これらは「一度きりであってほしいお祝い事」(結婚式)や、「繰り返したくないこと」(お見舞い、弔事)に使われる水引です。
七五三で使うのは間違いですので、絶対に選ばないでください。
(2) 表書きの書き方
水引で上下に分かれた、外袋の書き方です。毛筆または筆ペンを使い、濃い墨で丁寧に書きます。
- 上段(水引の上):
中央に「初穂料」または「御初穂料」と書きます。「玉串料」でも間違いではありません。 - 下段(水引の下):
中央に、ご祈祷を受ける「お子様のフルネーム」を書きます。
親の名前ではありませんので、くれぐれもご注意ください。(神様へ「この子のためにご祈祷をお願いします」という意味合いのため) - 兄弟姉妹(連名)の場合:
中央に、年長者(上の子)の名前をフルネームで右側に書き、その左側に下のお子様の名前をフルネームで書きます。

(3) 中袋(中包み)の書き方
お金を入れるための中袋(または中包み)がついている場合です。
- 表面:
中央に、包んだ金額を縦書きで書きます。正式には「金 壱萬圓」のように旧字体の漢数字を使いますが、現代では「金 10,000円」のように算用数字でも構いません。 - 裏面:
左下に、ご祈祷を依頼する親(保護者)の「郵便番号・住所」と「氏名(フルネーム)」を書きます。
(4) お札の入れ方と渡し方
- お札:
できる限り、銀行で両替した「新札(ピン札)」を用意するのが望ましいマナーです。
新札が無理でも、なるべく綺麗なお札を選びましょう。 - 入れ方:
お札の肖像画(お顔)が、中袋の「表面」かつ「上側」に来るように、向きを揃えて入れます。 - 渡すタイミング:
神社に到着後、社務所(しゃむしょ)や祈祷受付に行き、備え付けの「祈祷申込用紙」に住所・氏名・願い事などを記入します。
その申込用紙を提出する際に、のし袋も一緒に「本日はよろしくお願いいたします」と一言添えて渡すのが一般的です。
※お寺でご祈祷を受ける場合は、表書きは「祈祷料」「御祈祷料」または「御布施」とし、同様に準備します。
失敗しない親の服装マナー
最後の準備として、当日の「服装」についてです。七五三の主役は、もちろん晴れ着をまとったお子様です。ご両親の服装は、その主役を引き立てつつも、神様にご挨拶する場にふさわしい、品格のある装いが求められます。
大原則(1):主役は子供。控えめな「準礼装(セミフォーマル)」を
親の服装が、お子様の衣装よりも派手になってしまうのはNGです。色合いは、ネイビー、グレー、ベージュ、黒、淡いパステルカラーなど、落ち着いた上品な色を選びます。
神社の境内は厳かな場所です。露出の多い服装(ミニスカート、胸元の大きく開いた服、ノースリーブなど)や、カジュアルすぎる服装(デニム、Tシャツ、スニーカーなど)はマナー違反となります。
大原則(2):両親の「格(かく=フォーマル度)」を揃える
服装マナーにおいて、最も重要なのがこの「格を合わせる」ことです。ご両親の服装のフォーマル度に差がありすぎると、ちぐはぐな印象になり、記念写真のバランスも悪くなってしまいます。
「格」を合わせる具体例
◎ 良い例(バランスが取れている)
- 母:セレモニースーツ(洋装) + 父:ダークスーツ(洋装)
- 母:訪問着(和装) + 父:礼服またはダークスーツ(洋装)
△ 悪い例(バランスが悪い)
- 母:訪問着(和装で最も格が高い) + 父:カジュアルジャケット・ノーネクタイ(格が低すぎる)
- 母:普段着に近いワンピース + 父:礼服(ブラックフォーマル)(格が高すぎる)
必ず事前にご夫婦で「当日は何を着るか」を打ち合わせし、格を揃えるようにしてください。
母親の服装ガイド
母親の服装は、和装と洋装の2択がありますが、現代ではお子様のお世話のしやすさなどから洋装が主流です。
- 洋装(主流):
入園式や入学式・卒業式で着用した「セレモニースーツ」(ツイード素材、ノーカラージャケットなど)や、上品な「ワンピースアンサンブル」が最も一般的です。
着回しができて経済的です。アクセサリーは、コサージュや一連のパールネックレスなどを合わせると、控えめながらも華やかさが出ます。 - 和装(格が高い):
お子様が和装の場合、母親も和装で揃えると、非常に格調高く素敵な記念になります。
着用する場合は、訪問着(ほうもんぎ)、付け下げ(つけさげ)、色無地(いろむじ)などが適しています。
ただし、着付けやヘアセットの費用と時間がかかること、そして何より動きにくく、お子様のお世話(トイレ、抱っこ、草履の履き直しなど)がしにくい、というデメリットも考慮する必要があります。
父親の服装ガイド
父親の服装は、母親よりもシンプルです。
- ダークスーツ(基本):
濃紺(ネイビー)やチャコールグレーなどの、お手持ちのビジネススーツで全く問題ありません。
ただし、派手すぎるストライプ柄などは避け、無地か、それに近いものを選びましょう。 - シャツとネクタイ:
シャツは、白無地のレギュラーカラーかワイドカラーが最もフォーマルで間違いありません。
ネクタイは、白やシルバーが最も格が高いですが、お祝い事ですので、派手すぎない上品な色柄(ペールトーンのストライプや小紋柄など)でも良いでしょう。 - 礼服(ブラックフォーマル):
母親が訪問着などの格の高い和装を選ぶ場合、父親も格を合わせて礼服(結婚式などで着るブラックフォーマル)を着用すると、非常にバランスが取れます。

豆知識:11月15日は「きものの日」
七五三のお祝いで、多くの子供たちが着物(和装)を着ることにちなんで、全日本きもの振興会は11月15日を「きものの日」と制定しています。
お子様の晴れ姿に合わせて、この機会にご両親も和装にチャレンジしてみるのも、日本の文化を受け継ぐという意味で、非常に意義深く、素敵な思い出になるのではないかと思います。
まとめ:「11月15日の七五三は祝日ですか」
さて、「11月15日 七五三 は 祝日 ですか」という、皆様が最初に抱いた疑問から始まり、日程、年齢、六曜、準備に至るまで、七五三に関する情報を網羅的に解説してきました。
最後に、この記事の要点をまとめて総括します。
この記事の最終まとめ
- 11月15日は祝日ではない
法律(国民の祝日に関する法律)で定められた休日ではなく、日本の伝統的な「年中行事」の日です。したがって、その年によっては「平日」となります。 - カレンダーの表示は「行事案内」
Googleカレンダーなどで「祝日」と表示されるのは、法的な休日という意味ではなく、「七五三という行事の日」という案内が誤解を招く形で表示されている可能性が非常に高いです。 - 年齢は「満年齢」が主流(どちらでもOK)
伝統は「数え年」ですが、現代は子供の負担を考慮し「満年齢」で祝うのが主流です。ご家庭の方針やお子様の成長に合わせて柔軟に決めて問題ありません。 - お参りは「分散化」が賢明
11月のピーク(土日)は神社が大混雑します。あえて10月や12月に時期をずらしたり、「前撮り」と「お参り」を別日にしたりするのが、現代の賢い選択です。 - 準備はマナーと確認を大切に
初穂料の金額は必ず事前に神社へ確認し、のし袋の書き方(水引は紅白蝶結び、名前は子供)や、親の服装(主役より控えめに、格を揃える)といったマナーを守り、当日慌てないようにしましょう。
11月15日の七五三は祝日ですかという疑問は、単に日付の白黒をつけたいというだけでなく、その裏にある「お子様の大切なお祝いを、いつ、どのように行うのがベストなのか」という、ご家族の深い悩みや迷いが表れているように、私には感じられます。
祝日であろうとなかろうと、11月15日が、古くから子供の無事な成長を神様に感謝し、家族の絆を確かめてきた、日本の大切な文化の象徴であることに変わりはありません。
伝統的な日付や形式、六曜などに縛られすぎることなく、何よりもお子様の体調とご機嫌を最優先に、ご家族全員が心から笑顔になれる一日を選ぶこと。それが、現代における七五三の最も大切な「正解」なのではないでしょうか。
この記事が、皆様のご家庭にとって最高の一日を計画するための一助となれば、心から嬉しく思います。お子様の健やかなご成長を、陰ながらお祈りしております。